もう１つの裏ハニー
□リスク
1ﾍﾟｰｼﾞ/6ﾍﾟｰｼﾞ
───最近なんだかアイスが素っ気ない
顔を合わせれば喧嘩してる感じだから決して仲良くはないけど､ちょっかいを出しても反応が薄い
前は些細な事でも突っ掛かってきてたのに､今では何を言ってもやんわり交わされて絡んでこない
原因は分かってる｡この合宿中に出逢ったキラキラ王子…かと思ったら桃先輩
底抜けに明るいアイスとは気が合うみたいで一緒にいる事が増えている
対照的に俺とは徐々に会話も減っていって接触はほんの挨拶程度
しょうもない言い合いばかりだけど､小さい頃からどんな形でもアイスの気を引くのは俺の特権だったのに
はっきり言ってつまんない
他の人と仲良くしてるのを見ると何かモヤモヤする…
｢アイス｣
｢ん〜？なぁに？｣
｢いつまでやってんの？邪魔だから早く退いt……あれ？｣
｢アーン？また私のやる事にクレーム付けて…って､何？どうかした？｣
｢アイスってシャンプーか香水変えた？｣
｢え？｣
休憩の後に球拾いをしていたアイスを見付けて話し掛けてみる
返事は返ってくるけど視線はボールに向いていてこっちを見てくれない
じわじわ距離を縮めていくとフワリと香る匂いが違う
何時もの甘い系じゃなくて別物の…どっかで嗅いだ事のある香り
｢アイス先輩！これマジでハンパないっス！｣
｢ピーチキャッスル！｣
｢……｣
不意にiPodを持って現れたのは桃先輩
目の前を通り過ぎた時に香った匂いに俺の嗅覚が反応した
アイスから香ってきたのと同じやつ
ついさっきまで桃先輩と一緒に居たんだ
｢試作品だって貰った活性化コロンとBGMのお陰で乾先輩とのゲームに勝ちました｣
｢マジマジ〜？コロンは成功か…コレに入ってる曲は集中力が上がるって話題だったからダウンロードしてみたの｣
｢さっきの良かったからまた試合の前に聴かせてくれません？この後英二先輩とやり合うんで｣
｢菊にゃんと？なら今一緒に聴く？別バージョンもあるの｣
｢良いんすか？やったー｣
｢･････････････｣
桃先輩が来るなり実験の成果をニコニコと上機嫌で聞いている
久し振りに見た無邪気な笑顔
俺の前だと滅多に笑わないのに…この差はなに？
何時ものくだらない発明品絡みだけど盛り上がってる
二人仲良く寄り添ってイヤホンを片方ずつして何か聴いてる
…そんなに楽しそうにしないでよ
｢匂いが移るまでくっつくなっつーの｣
何でかな…胸の辺りがズキズキして痛い