恋患い

□貴方の理性はhow much?
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〜実験台・美々の場合〜




何よりも大切だから、安易に手を出して関係を急ぎたくない


一線を越えてはいけないと分かっている。それでも溢れる欲は抑えられない


毎日が葛藤と後悔の連続だ



「…勘弁してくれよ」


『練習が終わったから迎えに来て』とLINEが入ってきたから監督に報告書を提出した後に部室へと向かった


すると、何時もは賑やかで騒がしいソフト部の部員達の気配が全くない


その代わりに広々とした部室でベンチに横たわる美々を見付けた


いくら人気がないからと言っても警戒心がなさ過ぎる


最近やたらと美々の無防備かつ大胆な行動を目の当たりにするのが増えた気がする


今だって窓は開けっ放しで、暑さの所為かはだけた着衣から鎖骨や胸元がチラ見えするという乱れた姿を晒している


何処で誰が見ているか分からないのにコイツは…ハラハラしつつ思わず溜息が出てしまう


それと同時に毎回襲いたくなる衝動に駆られておかしくなりそうだ


レイラにまた何か余計な事を吹き込まれたか?



「おい、美々起きろ。こんな格好で寝てたら風邪を引く。さっさと起きねぇと喰われるぞ」

「ん〜……」


理性を保ちながら声を掛けるが一向に起きる気配がなく、乱れた格好を直してやろうとするも擽ったそうに身動ぐから直せない


「はぁ…、起きねぇな…まさか寝てんじゃなくてどっか具合でも悪いのか?」


露出した素肌を直視しないようにどこか涼しい場所まで運ぼうと、小さな躯を抱き上げる


ふわりと香る甘い香りと柔らかい肌が、じわじわと俺の理性を脆く削っていく



「…………けい、ちゃ…ん、…」

「美々?」

「…………」


今のは寝言か?ヤバい、…そうこられたら自制とぶ


そんな甘い声で俺を呼ぶな


抱いたまま部室のドアを開ける途中で思わず躯がビクリと強張る


腕の中にいる美々が、俺の胸元へ無意識に擦り寄ってくるから一歩も動けなくなってしまう


白くて細い指で制服の裾を握りしめて顔を埋めるように密着してきた


この出来すぎたゼロ距離に脈拍が一気に上がり、抱えている腕さえも震えて理性が溶けていく



(このまま押し倒して全ての欲望を叶えたい)


なんて邪な感情が俺をけしかける



「惚れてる女に煽られ続けるとダメになるな…お前が大事だから抑えてきたが限界だ…」


頬に手を添えて安心しきったような顔で眠る美々の唇をそっと塞ぐ


寝ている相手に手を出すなんてフェアじゃないがこれくらいなら許されるだろ


美々の身も心も全て俺のモノにしてしまいたい…好きだから求めるのは当たり前


もっと美々に触れたい反面、あどけない寝顔を見ると襲ってくる罪悪感


限界に達している欲と葛藤して自暴自棄になりながら再びベンチへと優しく降ろして寝かせる


美々はその軽い衝撃に呻いたものの、未だ起きる気配はない


荒ぶる気持ちを抑えつつ喉がゴクリと嚥下し、着衣の乱れを直す


「……ゴメン、な…」


髪に指を絡めて撫でてやり、俺はゆっくりと離れて外に出てドアを閉めた



「…何やってんだ俺は」


ドア越しに背を預けてズルズルとその場に凭れて頭を抱えて座り込む


「…今回は流石にヤバかった」


ギリギリのラインで何とか耐えた理性は無に等しい


美々がどんどん俺をその気にさせるから、いつ箍が外れてもおかしくない


…頼むからこれ以上煽らないでくれ


そんな風に俺が後悔しまくって頭を悩ませている扉一つ向こうでは





「…景ちゃんの意気地無し」


煮え切らない彼の行動にふて腐れて納得のいかない美々


そして、更にその場のロッカーでは


「あーもう、焦れったい!!折角の据え膳を喰わないってバカなのか?!」

「やっぱり跡部だと賭けにもなんないね〜」

「美々先輩ファイトです」

「あと少しだったのに…あの二人はどんな時でも通常運転だね」


状況を見守るために潜伏中だった皆は何も発展しなかった二人に不服だったり、安堵したりとリアクションは様々


結局、跡部からは一円も巻き上げられずにモヤモヤだけが募った


「…あたしの事は好きでいてくれてるみたいだったし、チューが出来た事はレイラ達には秘密にしとこ」

「美々には悪いことしたけど思った以上に財布が潤ったからピンチの時はまたやるか」


何だかんだで結果オーライ?
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