アネモネ
□0話
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季封村に夕日の光が差し込む時間
長い1本道には二人の影があった
少年の背中で泣きわめく少女
弱い少女の名前はみさき
強い少年の名前は真弘
「ぅっふッうぅっ」
「もう痛くねーだろ?なんで泣くんだよ?」
「ぅうッっ真弘っ腕から、血ぃでてるよっ」
「こんなの大したことねーだろ?」
あのプライドが高い真弘があたしをいじめてた6年の男の子たちに土下座した
「みさきをいじめないでくれっ。おねがい・・・します」って…
それから蹴られて、殴られて、あたしのせいでボロボロになった
いつもならあんな奴らすぐにやっつけられるはずなのに…
あたしが人質になったから、真弘は・・・
「真弘ぉぉ」
「たくっ!あそこは6年のやつらがたまるとこなんだぞ!なんで行ったんだよ?」
「だって…」
「なんだよ」
真弘の首に回す手を強める
「だって、あの人たち真弘のこと8歳のくせになんでも知ってて不気味だって…酷いこと…たくさん言ってたんだもん…グスッ」
「あのなぁ…俺はそんなの全然気にしてねぇーっつーの!そんな戯言ほっときゃいーだろー」
「あたしはっ!真弘のことなんも知らないのにそうやって悪く言うのやだ!!真弘がよくても、あたしはやだよ!!」
「ッ///くっだらね!」
くるっと前を向く真弘
同じ年なのにいつも助けられてる…
真弘の悪口言ってるのがやであたしが止めて、助けにきた真弘がボロボロになってるんじゃ意味なんかないのに…
悪いのはあたし
「ごめんね…」
「別に気にしちゃねーよ!だけど次から危ないことすんなよ!」
「うんっ!」
「お!みろよ!空!さっきまで真っ赤だったのに青も交じってるぞ!!」
「綺麗。半分夜で半分夕方みたい」
真弘の背中から降りて小さな丘まで駆けてゆく
「うわぁ!すごいよ真弘早くこっちきて!」
「おまっ速いっ!…!おぉぉ!すげぇ!」
「綺麗だなぁ…。ねぇ、真弘。あたし、真弘ぐらい強くなって、絶対に真弘を怪我させたりしないでみせるからね…」
「たくっ。気にすんなっていってんのによぉー。みさきはそのままでいいんだよ!……俺が、これからも守ってやるからなっ!」
「あたしを守ったら真弘はボロボロになるの?」
「ならねーよ!俺は強いんだ!知ってんだろ?」
「うん!真弘は強いっ」
「…俺はお前がどこにいようが見つけ出して助けてやる。だからお前は怖いことなんて考えなくていいよ」
いつもみたいにおちゃらけている真弘とは全然違って、優しく、強く、凛とした声でいう
幻想的な空を背景とした真剣な顔の真弘に魅了される
大好きな、真弘の顔
「約束だっ!!」
そう言って小指をつきだす真弘にあたしも小指を近づけて絡めた
「約束っ」
小さな子供の小指
だけど心からの大きな約束だった
真弘、あたしにとってヒーローみたいな君が初めてくれた約束
大好きな真弘がくれた約束は、あたしにとっての幸福でした
約束