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□Rainy Day〈番外編〉
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「主人公ですよ」
上質な紙の上で繰り広げられていた孤島の惨劇から、一気に現実に引き戻された。
外は相変わらず雨の憂鬱を纏っている。
屋根に降り注ぐ音が部屋の静寂を物語っていた。
それを打ち破って、今まで沈黙を守っていた高遠が半ば唐突に口を開き、たった一言呟く。
そのまま放っておけば良かったのに、愚直に聞き返してしまった私は、バカだ。
「何が?」
「犯人」
……大バカだ。
私が一瞬にして固まったのをわかっているのかいないのか、高遠は淡々と語る。
「叙述トリックですよ、よくある使い古された手です。ミスリードの仕方はなかなかでしたが」
でもまぁ、私には簡単でしたけど、と付け加える。
呼吸も忘れそうなほどだった私は、やっとの思いで言葉を発した。
「……今、自分が、何をしたか分かってる?」
「そんな駄作に貴重な時間を奪われる沙奈を見かねて、つい親心で」
しれっとそんなことを言ったかと思うと、礼には及びませんよ、などと付け足した。
それなら読む前に止めてほしい。
それをせずに敢えてこのタイミングで云うなんて、嫌がらせ以外の何ものでもないだろう。
そもそもこの本を薦めたのは、他ならぬ高遠なのだ。
ふつふつと、煮えたぎる。
「……あとちょっとだったのに」
「おや?心外ですねぇ。喜んでもらえるかと」
「誰が!」
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