Main T
□Rival In Love〈U〉
1ページ/1ページ
【prologue】
契約だなんて持ち出してしまった手前、そうそう馬鹿みたいに甘やかしたり出来なくなってしまった。
しかも彼女は元来の生真面目さから、私が誘わないといつまでも大人しく待ち続ける。
確かに契約とは言ったが、「幸せである」ことが自分の権利であることは忘れているかのようだった。
全ての家事をそつなくこなし、大学とバイト先に行く以外はアパートで静かにしている。
これでは意味がない。
夜も何かと理由を付けてこちらから誘うのだが、だんだん億劫になってきた。
抱くことが、ではない。
何となく理由を付けないと触れられないような、変な暗黙のルールが成り立ってしまったのだ。
とは言え、抱けば悦んではいる(はず)なので、ほぼ毎日自分的にも苦しい言い訳をしながら行為に及んでいた。
だから、仮眠を取っていた私の耳元に、熱い吐息がかかって欲情した彼女を感じられたことに、少々驚きはしたものの満更でもない自分がいる。
たまには、こうやって積極的になってもらわないと。
ただ、すぐ応えたのでは沽券にかかわるから、寝たふりを決め込む。
耐えられないのか、いきなり耳の奥にぴちゃりと舌が入り込んで、何度も何度も舐められる。
さすがにこれは、堪らない。
ん、と声を上げて、今気づいたような振りをした。
「……そんなに焦って、珍しいですね」
とか何とか言いながら、待ちきれないでいる可愛い彼女の髪を撫でようと寝返りをうった。
さて、どれだけ可愛がってあげましょうか、と言いかけた私の目に飛び込んできたのは。
―