桜の雫

□〜第二幕〜
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『実は…私は…っ』


ぐっと言葉に詰まるけど…


『私は風間、雪村と同じ、正統な純血の血が流れる天羽家当主。
そして、伝説の鬼の一族』


そう言い切ったとき、少し空気が揺らいだ


千「…そ…んな…柚希まで…」

『私は…小さい頃の記憶を何故か失くしているから、小さい頃からこうだったのか…
詳しいことは分からないの。
でも、正統に天羽家の当主というのは確か』


思わずうつむくと、チリンッと鈴が鳴った
きっと…出ていけ!と言われるか…
即刻殺されてしまうだろう…


土「…はぁ…っお前も鬼か。
ったくよぉ、何でここには鬼がこうも集まってくんだ?」

沖「鬼の副長がいるから…じゃないですか?」

はははっと笑う沖田さん
どうして…こんなに平然としていられるの…?


千「ここのみなさんは柚希が考えている心配はいらないよ?
大丈夫」

にこっと笑う千鶴
うつむいていた顔を上げると、さっきまでの張りつめた空気は無く、全員優しい顔をしていた

『…っあり…がとう…っ』

平「大丈夫か?ほら。」

藤堂さんが手を伸ばしてくれる


藤堂さんの手をとり、あふれる涙をこらえながら立ちあがった

『私がここに長居してしまうと…また風間が来ます』


初めて…鬼としての自分を受け入れてくれた人たち…

しかも千鶴までいるこの場所に迷惑なんかかけたくない


『風間は、まだ私の姓や詳しいことは知らないはずです。
天羽家の情報は、あまり知られていないので…
でも風間はきっとどうにかして調べるでしょう。』


いくら天羽の血が純血でも、雪村の方が狙われやすい。
天羽の血は…伝説の血
素性の分からない…謎の血だから


『天羽の血が謎のままなら、風間はこちらに気が向いて、千鶴が危険な目にあうことも少なくなります』


沖「ねぇ、君がここから出て行って、行くあてはあるの?」

『そっそれは…』

原「女1人でこの町を歩くのは危険だぜ?」

沖「ね?土方さん」

土「…しょうがねぇ。
千鶴、こいつの面倒はまかせた。
お前も勝手な行動はとんじゃねぇぞ」


言っていることは少し厳しいのに…
なぜか口調は柔らかい

千「はい!柚希、良かった。
また一緒にいられるよ」

『でっでも!!』

斎「ここを出て、あんたが危険な目に会い続けるのを黙って見ている方が寝覚めが悪い」

『……』


新選組の人たちは、口ぐちに「よろしくなっ」など、あいさつをしてくれた

平「さっきは…ゴメンな?
痛くなかったか;?」

心配そうに覗き込んでくる藤堂さん
本当は…みんな優しい人たちなんだ…

『大丈夫です。ありがとうございます。』

なぜか急に藤堂さんの顔が真っ赤になる

永「お〜?平助、どうした??
柚希姫に惚れたか??」

『あっあの…私、姫なんてそんな…』

からかうように藤堂さんのことをつつく永倉さん。
さっきよりも赤くなる藤堂さんは永倉さんに掴みかかってゴチャゴチャになっていた


『…;;』

千「いつもこんな感じだから、気にしないで」

斎「副長、この女子の性については、いかがなされるおつもりですか」

土「そうだな…」

『あっあの!わたし、男ってことで接しては頂けないでしょうか?』


ずうずうしいかとも思ったが…これだけは譲れない
風間にもばれたくはない


沖「めずらしい子だね。
男として接してくれ、なんてさ」

『…すみません』

沖「僕は褒めてるんだよ。…何かあったら言ってね」

『え…?』

沖「君、なんでも1人で溜めこんじゃう子でしょ?
しかも、大きな問題になればなるほど、ね」

『そんなこと…!』

沖「だから頼れって言ってるの」

『うっ…』

思わず、沖田さんをにらみつける

平「…なぁ、やっぱ柚希って普通に女の子じゃん!」

ヒョコっと横から顔を出してニコっと笑う藤堂さん

なぜ急にそんなことを言われたのか分からず首を傾ける


平「だってさ〜今の顔とか見ても、いい意味で普通の女の子だったし。
“当主”とかいうからもっとお堅いヤツなのかと思ったけど」

『当主といっても、普通に暮らしてたので…』

土「まっ今日はお前も疲れてるみたいだしな。
ゆっくり休め」

『はい…ありがとうございます』

土「部屋は千鶴の部y『ダメです』…は?」




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