桜の雫

□〜第二幕〜
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千「…!?もしかして…柚希なの…?」

『ちっ千鶴!!!』

思わず抱きついた…
千鶴は…そう、

小さい頃の記憶で唯一、鮮明に覚えている存在

小さい頃によく遊んだ
そして…親友だ


千「柚希…無事で…良かった…」

『…っ千鶴も…よく無事で…』

千「柚希…その顔…何か辛いことでもあったの?」

『いや…辛いっていうか…』

そう言いかけたとき…


平「ちょぉぉぉぉっと待ったぁぁ!!」

ふいにぐいっと腕を引っ張られる

『きゃぁ!?!?』


完全に油断していた私はバランスを崩して床に倒れこむ

どさっと床に身体を打ちつけた


永「おい…っちょっと待て…今女の子っぽい声がした気がすんのは…俺の空耳か?」

原「いぃや…確かに「きゃぁっ」って聞こえたな」

平「…えっ?」


『…っ』

そんな失態をしたことに気づいてない私は腰の辺りをさすりながら起き上る

千「柚希!平助くん!何するの!?」

平「いや、もし鬼と関係してるヤツなら危ねぇかと思って…」

千「さっきの会話を聞いてなかったの?
この子は柚希、私の親友。
あと女の子だよ。こんなカツラかぶって〜」


カツラをぱさっと取れば、漆黒の胸ほどまでの髪が露わになる



まさかの全員がものすごく驚いた顔になる

うすうす、女の子かな…と感じていたようだが、柚希の男装は完ぺきと言っていいほどだったから

驚いてしまったのだ



―…すっと髪を束ね、千鶴のようにひとつに結う
鈴のついた深紅の紐で…

千「柚希は、その紐でいつも髪を結うよね」

『うん。コレが…』


天羽家当主の証だから…


千「…?どうかした?」

『ううん、大丈夫…それより…』

すっと新選組の人たちの方に向き直る

『性を偽っていたこと…まことに申しわけありません。
これには…理由がございます』


当主のときの挨拶のように…天羽家に関する話題の時は、改まってしまう

だからなのか、ひざの上の拳を強く握ってしまう


千「柚希…」

『千鶴、あなたは…鬼のことは聞いてる?』

千「…うん」

『…そっか…。辛い思いはしてない?』

千「大丈夫…でも…雪村の姓がまさか鬼の…ってえ?
柚希…どうしてこのことを?」


その瞬間、またピンッと張りつめた空気に変わる

この空気は苦手だ…。





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