立海2

□君をかけて
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『えっ…合同練習ですか…!?』


「うん、2年生に連絡よろしくね」


『…はい、わかりました』


「サボっちゃダメだからね、名前ちゃん」


『ゔっ……はい』

じゃーね、なんてにこにこ手を振って行った部長を見送る。

言っておくけど、私は別にいつも部活をサボっているわけではない。こうして稀に、ごくごく稀にある男女混合練習が嫌で参加せずに、私はひとりで校外のコートに行くって練習してるんだ。

もちろん許可は取るよ?でも合同練習も部活の一環だから本当はダメなんだよね。




『はぁ…』


「名前、どーしたの?」


『あ、綾美。今日合同練習だって』


「うっそマジで!?やったー♪」


『………』


「何その顔。そんなに嫌なのー?変わった奴ねーホント」


『普通だよ』


「今日はちゃんと出るんだよ!」


『うーん…』

ウキウキする綾美を前に私は曖昧に笑ってみせた。
……だって、本当に参加したくないんだもん…。今だになんでこうやって合同練習をするかわからない。
自分で言うのもなんだけど、確かに女テニも強い。でも男子のレベルと比べたら天と地の差だ。

まぁ強い人とやることで上達はすると思う。すごく勉強になる。
…………でも、男子とはなぁ…。嫌だなー…。あーあ、鬱だなぁ…。

放課後なんて来なければいいのに………なんていう私の願いが叶うはずもなく。

あっという間に放課後になってしまった。



『綾美、その恰好…』


「ふふっかわいいでしょー?」

得意げに笑ってくるりと回る彼女と同時に、ふわりとスコートがゆれる。


『うん、かわいいよ』

私がそう答えると、綾美は嬉しそうに笑った。スコートにくわえ、いつもは適当にしばっている髪も今日は丁寧にポニーテールにしてある。

さっと周りを見ると、みんないつもより身嗜みに気を遣っているようだった。
一方私はいつもと変わらず。第一スコートなんて持っていないし髪型だって帽子をかぶっているから気にしない。

みんなよくやるなぁ…。



「キャー!」


「幸村先輩だわっ!」


「丸井くんも来た!」

ぼーっとしているうちに、男子テニス部の皆様がいらっしゃったようだ。
あーあ、始まっちゃったよ……。

男子テニス部(主にR陣)にさっそく女子が群がる(笑)


「あの…名前先輩は行かないんですか?」

つんつん、とされて後ろを向いてみると女テニ1年生のみんながいた。そわそわしてるからきっとみんなもR陣が気になるんだろう。



『私はいいから、気にせず行ってね。いろいろ勉強してくるんだよ』

私の言葉を聞くと1年生は安心したようにその場をあとにした。
…まぁ今更行ってもR陣と話せる可能性は低いけど。パワフルだなぁ。


残されたのは私だけ。

所々でウォーミングアップの乱打が始まる。………主に男テニの残された人たち同士。

私は隙を狙ってさっとコートから出た。




『やっぱり向かないなぁ…』

激しい罪悪感に襲われながら、少し離れた場所でコートをながめる。
先輩に問い詰められたら具合悪くて保健室に行ったって言っておこう、うん。



「なんじゃ、サボりか」


『Σわっ…!』

急に声がして振り向くと、



『仁王、雅治……先輩』

女テニのみんなに囲まれているはずのR陣のおひと方がいた。しかもその中でも人気がある(と私が勝手に思っている)方。



『どうして、ここに…?』


「お前さんこそ。サボりか?」


『い、いえっ!決して、サボり、……では…ないです』


「嘘つくんじゃなか。お前さん、合同練習がある度サボってたじゃろ」


『Σゔ……こ、校外できちんと練習してました』


「部活があるんに?」


『うぅっ………仁王先輩こそ、こんなとこにいないで練習戻った方が良いんじゃないですか?』

そうだ。早くいなくなってもらわないと困る。きっと女子は仁王先輩がいないのにはもう気づいているだろう。
このままだと私も見つかってしまう。



『仁王先輩、女の子たちも探してますよ』


「かまわん」


『私はかまうんですけど…』


「サボりがばれるからか?」


『………』

…鋭いな。
わかっているなら早く練習に戻ってほしい。戻らなくともここからいなくなってもらえると非常に助かる。

そんなことを考えていたら、あることに気づいた。そう、私がいなくなればいいんだ。
よし、



『では私は失礼しますね』

ぺこりと頭を下げ、私はその場から離れられなかった。



「どこ行くんじゃ」

察しはつくでしょう、仁王先輩に腕を掴まれてしまったからだ。



『どこって…仁王先輩のいらっしゃらない所、ですかね?』

走り出したものの、別に行き先など決めていなかった。とりあえずここから離れられれば良かったから。



「なんじゃ、そんなに俺が嫌いなんか」


『い、いいえそんなつもりじゃ…!えーと、仁王先輩といるとすぐ見つかってしまうので』


「嫌われてないならよか。せっかく名前と話せたんに嫌われてたら元もこもないからのぅ」


『え?』


「ま、お近づきのしるしに」

そう言って仁王先輩が近づいてくる。端正な顔がだんだんアップになってきて、



『っ///』

……、私は咄嗟に帽子で顔を隠した。



「帽子、邪魔じゃよ」


『じゃ、邪魔じゃありません!離れて下さい///!』


「そんな寂しいこと言いなさんな。可愛い名前の顔を近くでみたいだk」


ヒュン、と音がして仁王先輩と私の手が離れた。帽子の鍔をそっと上にあげてみると、仁王先輩は私をつかんでいた方の手をさすりながら後ろを向いていた。


「なんじゃ、もう見つかっちまったのか」


「当然」

その声に、はっとする。



『幸村先輩…』


「こんにちは、俺の可愛い名前ちゃん」


『え?』

幸村先輩の言葉に硬直する。


「大丈夫かい?仁王に変なことされなかった?」


『え、えーと…』


「何かする寸前でボールを打ってきたのは誰じゃ。相変わらず並外れたコントロールじゃの」


「ふふっ…当然だろ」

その会話を聞いて、仁王先輩が手をさすっている原因が分かった。



「怪我はない?」

心配そうな表情で幸村先輩が私を覗き込む。それと同時に私を仁王先輩から隠すように素早く抱きしめた。



『(!)け、怪我はありません、ので………その、離していただけませんか?』


「それは聞けないお願いだな」

耳元で幸村先輩が笑う。綺麗な声に自然と胸が高鳴った。




『に、仁王先輩ー…!』


「ふふっ…俺が目の前にいるのに他の男の名前を呼ぶなんて酷いなぁ」

そう言われ、何も言えなくなる。
ど、どーしよっ…!

そもそも、なんで私は幸村先輩に抱きしめられてるんだろう?てか幸村先輩、部活は?部長さんなのに抜けてきて大丈夫なのかな?
あ、まずいっ!幸村先輩もいないならますます見つかる可能性が高くなっちゃう…!!


「幸村、俺だって怒るぜよ」

私だけがわたわたしている間に、仁王先輩が話しだす。



「へー…俺にたてつくんだ?」

ゆっくりと幸村先輩が離れる。そして振り向いて仁王先輩を見ると、真っ黒なオーラが彼からあらわれる。
あれ、おかしいな。黒すぎて仁王先輩の姿が見えないよ。



「名前のこととなれば、話は別じゃ」


「ふふっ…俺もだよ。コートへ出ろ。テニスで決着だ」


『ちょ、ふ、二人とも!何おっしゃってるんですか!』


「安心してね、名前ちゃん。試合に勝って君の彼氏になるのは俺だから」


「何言うとる。俺は越前にもなれるんじゃ。勝たさんぜよ。名前、安心して俺を応援しんしゃい」


『……はい?』

再び硬直する私。なんだこれどうしよう。誰かこの2人を止めて…!!
てか逃げていいかな?



「隙アリっ!!」


『きゃっ!』


「ナイス赤也!!」


『えっ…!?』

背後から伸びてきた手にとらわれた。突然のことに体が大きくはねる。


振り向くと、丸井先輩がいた。パッと離れて体を反転させてみると、得意げな表情をした切原くんと目が合った。


「大丈夫か?」


『うん…。ありがとう、助かったよ』

同学年の彼を見てなぜかほっとした。


「俺だって関与してんだぜ?」


『あ、ありがとうございます、丸井先輩…』


「おぅ」

丸井先輩が目をきゅっと細めて笑う。……綺麗に笑うなぁ。
恥ずかしくなってふいっと目をそらしてしまう。そしてあまり見たくない事実を目の当たりにした。



「「…………」」

幸村先輩と仁王先輩が睨んでいたんだ。


「赤也、名前から離れんしゃい」


「も、もうどこも触ってないっスよ!」


「名前ちゃんの半径100m以内に近づかないでくれる?」


「そりゃねーだろぃ、幸村くん。俺だって名前と仲良くしたいんだぜぃ」


「お、俺もっス!!」


『………』


「ふふっ…じゃあ2人も勝負するかい?」


「トーゼン」


「ま、丸井先輩っ…!?」

どんどん悪化していく状況を私はただおろおろしながら見守っていることしか出来なかった。

切原くんも似たような状況だったので、そっと彼に近寄って耳打ちした。



『切原くん、なんとかならないかな』


「Σえっ…///あ、…おー、………そ、そうだな///」

ぽっと切原くんの顔が赤くなり、うろたえるように目をキョロキョロ動かす。……?何か悪いことでもしてしまったのだろうか。


赤也


「Σわっ、ぶ、部長っ!」


『!』


「先輩をさしおいてそりゃねーだろぃ?」


「そうじゃ。先輩に譲りんしゃい」

私は合同練習のことなどすっかり忘れ、この状況をどうしようか必死に考えた。4人の間には火花がちっていると言っても過言ではない。…………そもそもなんで勝負なんだろう…?



『あの…』


「「「「何/だい?」」」」


『Σえっと、』

4人が勢いよくこちらをむくもんだからびっくりした。さすがR陣、息ぴったりですね…。


『その、なんで勝負なんて…?』


「そんなの決まってんだろぃ?」


「君を自分のものにするためだよ」


『へ…?』


「くくっ…まだ状況が把握出来とらんようじゃのぅ」

仁王先輩がそう言いながら目の前に立つと、私の帽子をさっと奪った。至近距離で仁王先輩と目が合う。
咄嗟のことで目をそらぜずにいると、衝撃的な言葉が私の耳に響いた。





「名前のこと、好いとうよ」


『…なっ///』

ぼぼっ!という効果音がぴったりな勢いで、自分の頬に熱が集まるのが分かる。
無理もない。告白なんてほとんどされたことのない私がこんなカッコイイ人に告られて普通でいられるわけがない。



「に、仁王先輩何言ってるんスか///!!」


「赤也の言う通りだ。抜けがけは許さないよ」


「いや、そういう意味じゃ…!こ、告白をこんなところで…」


「なーに赤也が恥ずかしがってんだよ。仁王が名前を好きなのは周知の事実だろ」

それに、と言って丸井先輩がぐっと私に近づく。



「俺だって名前が好きなんだぜぃ?」


『えぇっ///!?』


「ま、丸井先輩まで…!」


「名前ちゃんは本当にモテるよね」


『え、いや、あのっ…』

今度は幸村先輩の声がしたと思ったら、私の左手をすっと持ち上げて…、ちゅっと手の甲にキスをした。



『な、ななっ///』


「名前ちゃん、大好きだよ」

にっこり笑う幸村先輩を見て、もう私はわけがわからなくなってきた。



「せ、先輩達…!よくそんな…」


「赤也と違ってヘタレじゃねーんだよぃ」


「お、俺だってヘタレじゃないっス!!苗字!!」


『はいっ…!』


「好き!!!」

……………。


『………』


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


『………』

………ふと、ある考えが浮かぶ。……これ、もしかしてからかわれてるんじゃない?

そうだ、からかわれてるんだ…!じゃなきゃこんなことあるはずない!


『あの……からかうのはやめてもらえませんか?』

思わず一歩さがって話す。



「おいおい、それはないじゃろ」


「そうだよ名前ちゃん」


「俺等の気持ち、無下にしねーでほしいなぁ」


「(お、俺も何か言わなきゃ…!え、えーと………)」


『本気、なんですか?』


「(Σ!?)…ほ、本気だぜ!!」

切原くんが真っ先に答える。



『………』


「くくっ…赤也焦りすぎじゃ」


「ゔっ…///」


『で、でも…』


「信じてもらえないなら、」


「証明するしかなか」


「だなっ」


『え、しょ、証明…?』


「そうと決まったら勝負だ」


「総当たりがいいな」


「それでよか」


『え?え?あの、』


「じゃ、名前ちゃんは見ててね」

そう言って幸村先輩が肩にかけていたジャージを私の肩にかけた。


「俺が勝ったらこれ、着せてね?」


『えっ…、』


「俺が勝ったら、これで髪をしばってくれんかの」


『えっ、』

仁王先輩が、さらりと髪をなびかせてゴムをわたす。


「じゃ、俺が勝ったらこのガム食わせて。もちろん口移しでな?」


『く、口移し…///!?』

爽やかに笑った丸井先輩から、グリーンアップル味のガムを渡される。


「えぇ、そんな、先輩達ずるいっスよ!」


「赤也も何かすればよか」


「な、何か……何か何か?何があるだろ…」


「今はいてるその半ズボンでもおいてけば?勝ったらはかせてーって」


「なっ何言ってるんスか丸井先輩!!お、俺はじゃあ、…勝ったら一緒に帰ろ!」


『う、うん…』

反射的に返事をしてしまった。





「さーて、」


「「「「勝負だっ!!」」」」






君をかけて、いざ勝負!




わーお…中途半端。本当は仁王の小説にしようとしてたらしいのですが(最近発掘…笑)、急きょ逆ハ的に。
気に入らない点も多いし長いですが…、フリー小説にしますー^^
お持ち帰りして下さるかたへ▼
・自作発言はしないで下さい。
・誤字などありましたら、管理人に指摘した上で修正して下さい。
(私もなおしたいので…)
報告はもちろんフリーなので任意ですが、ひとこと下さると嬉しいですー…。

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