立海2

□Andante
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「ねー名前せんぱぁーい」


『んー何?』

帰り道。少し曇った空を見上げながら赤也と手を繋いで歩いている。



「俺、年下の男っていいと思うんス!」


『いきなりどうしたの』

赤也が突然目をキラキラさせながら話し出した。しかも右手はガッツポーズ。



「だって、男の方が寿命が短いじゃないっスか?年上の男と結婚したら早くおいていかれて寂しいっスよね?」

少し真剣みを帯びた瞳が私を見つめる。…いや、間違えた。どちらかというとこれはドヤ顔だ。



『まぁね。でも、結婚するなら年上がいいかなー』


「Σ( ̄□ ̄;)ガーン……な、なんでっスか!?」


『だって、安心出来るじゃん?いろいろ』


「いろいろっスか………」

赤也がしゅん、とする。……私、この表情に弱いんだよねぇ…。可愛いんだけど。



『大丈夫、年下と結婚したいって人もきっといるって!』

慰めるつもりであいている方の手でポン、と赤也の肩をたたくと今度はむっとした。何か悪いことでもしてしまったのだろうか。



「名前先輩のばか。俺が結婚したいのは名前先輩だけっス。名前先輩が年下おっけーじゃなきゃ意味ないんスよ…」


『………』

いきなりプロポーズまがいなことをされてドキッとする。……何これどうしたのこの赤也。…う、嬉しいけどさ///

でもさ、結婚するなら年上がいいと思う女の子って多いと思うんだよね。あくまで個人的な見解だけど。
だってさ、年上の方が人生経験も豊富だし何かと頼りになるじゃん?…私のイメージですが。



「名前先輩は、年下は絶対無理っスか!?俺じゃダメっスか…!?」

赤也がたたみかけるように話す。その勢いに圧倒されながらも少し疑問に思うことがあるので、口を開く。



『急に、どうしたの?』


「どうしたのって…質問してるのは俺なんスけど!」


『でも…赤也変だから』


「………。名前先輩って大人っスよね」


『赤也のひとつ上なだけだよ?』


「年齢的にはそうなんスけど…。精神的な面で。今日仁王先輩に不釣り合いなカップルじゃのぅって言われたんスよ」

また仁王は変なこと言って…!どーせ赤也がそうやって気にしちゃうのを見て楽しんでるんだよね、まったく。後で文句言わなくちゃ!



『赤也、そんなこと気にしなくてもいいから!私は赤也好きだし、赤也も私のことを好きでいてくれるならなんも問題ないでしょ?ね?』

そう言って赤也を覗き込むと、これまた複雑そうな表情をしていた。今日の赤也はどうしたんだろう。情緒不安定?



「むー………。そういうところが大人なんス!なんかずるいっス!そうやって慰めるのは男の特権なんスよー!!」

ムキー!って感じで赤也は頭をガシガシする。……そういうところが子供なんだよ、赤也。と言ったら更に機嫌が悪くなっちゃうからやめておこう。



『赤也、…わっ!』

私がそう言った途端、雨が降り出した。見上げるとさっきより雲が厚くなっている。心なしか風も強くなってきた気がして、不安を煽る。



「わ、やべっ!どんどん強くなってくる!」

赤也の言った通り、雨は激しさをましてくる。


「先輩、いったん雨宿りしましょ!」


『うん!』

さっきまでの表情はどこへやら。赤也はキリッとした表情で私の手を握りなおすと、近くにあった公園に私を導いてくれた。



「先輩、大丈夫っスか?濡れてないっスか?」


『うん、大丈夫。赤也こそ大丈夫?』


「俺は平気っス!…それより、どうしましょう……。俺、傘持ってないっス」


『私持ってるから、2人で入ろう。私の家まであと少しだし、ついたら傘貸してあげるね』


「……、先輩」


『え?』

私が傘をひらこうとすると、赤也の手がそれを阻止する。……何か気に入らなかったのかな?



「傘、ささないでダッシュで帰りましょ!」


『はぁ!?ちょ、赤也っ!!』

そう言うやいなや、赤也はさっきより速いスピードで走り出す。私は訳がわからぬまま傘を片手に赤也に引っ張られて走る。

赤也は一体何がしたいの…!?これじゃ帰るころには2人ともずぶ濡れじゃん!!




そんなことを考えているうちにあっという間に我が家に着いた。
もちろん2人ともずぶ濡れ。ひどいったらもう!

風邪をひかれては嫌だからとりあえず赤也を家にあげ、シャワーをかすことにした。




「じゃあ、シャワーかりてくるっス!」

なぜか笑顔でそう言った赤也を見送った後、私は赤也の靴を乾かすためストーブの前においた。
着替えはジャージを持っているから大丈夫らしい。




『まったくもう、赤也は…』

先にシャワーをあびた私は、あきれながらも自室に行って赤也を待つことにした。




「ふぃー!気持ち良かったっスー!」

しばらくすると、赤也がニコニコしながら入ってきた。よく見ると、まだ頭から水滴がこぼれ落ちている。



『赤也、まだ頭濡れてる!ちゃんと拭かなきゃ風邪ひいちゃうよ』


「じゃあ名前先輩が拭いて下さーい!」


赤也はタオルを差し出すと、私と並んでベッドに座った。


『もう、しょうがないな…』

わーいなんてはしゃぐ赤也を見て笑みをこぼしながら、赤也の髪を拭いていく。
…ふと、さっき赤也がしてきた結婚話が頭をよぎる。……結婚したら、こんな風にしょちゅう世話やくのかな。

ふふっ、赤也と結婚したらいろいろ大変だろうなぁ。朝とか起きなそうだし。いってらっしゃいのちゅーは?とか聞いてきそうだな。たまに家事を手伝うとか言って結局諦めたり、とかありそう。

って何変なこと考えてんの私は…!



「先輩?手止まってますけど…終わったんスか?」


『え、あっ…!』

赤也に言われて自分が手を止めていたことに気がついた。……私、そんなに考え込んでいたんだ……恥ずかしいな。



「先輩、なーに考えてたんスか?」


『な、何も』


「ウソ。なんか考えてた!…もしかして他の男のことっスか?」


『ち、違うよ』


「じゃあ、なんスか」

赤也が、私の手をがしっと掴む。思わずそれにびくりとしてしまった。



『さ、さっき赤也が結婚がどーのこーの言ってたから、それを……』


「…え?マジっスか?」


『…うん///』

ううっ…なんか恥ずかしいよ。
なんとなくいたたまれなくなって私が視線を泳がすと、赤也が嬉しそうに口角をあげた。



「先輩」


『ん?………わ!』







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