その他

□幸福論
1ページ/3ページ






『ねぇ、南…』

授業と授業の間の短い休み時間
私は隣の席の南にはなしかけた



「なんだ?」


『なんかさ…変な感じしない?』


「何がだ?」

主語が抜けている私の問に、南はきょとんとする



『キヨのことなんだけど…』

自称モテ男、南曰く派手な私の彼氏千石清純


“清純”なんて名前からは掛け離れた性格で、女の子大好きのチャラ男だ

いや、別に悪口ではない
付き合っている以上私も彼のことが好きだし…
今の関係にも十分満足している
でも…



『なんか…怖くない?』


「な、何かされたのかっ!?」

私の言葉に南が過剰に反応し、私の肩をガシッとつかむ



『!…違うよー。なんにも心配ない!』

私がヘラッと笑うと、南は引き攣った笑みを浮かべて私の肩からパッと手をどけた


…瞬間、

『!!』


「なーにやってんのかなぁ?南くんは」



『キヨ…!』

キヨが私を後ろから抱きしめる
体勢的に彼の表情は解らないが、声色から推測して少し怒っているようだ



「お、俺はただな…」


「ただ?」


『キヨ、南は悪くないよ?私が話しかけてただけ』

なだめるように言うと、彼は私を抱きしめる力を強める



「じゃあ、何で肩触らせてたのー?」

いつもの軽い口調だが、少し怒った様子のキヨ
自分で言うのもなんだけど、こうゆう時に愛されてるなーって思う



「苗字がお前のこと怖くないかって聞くから、何かされたのかと思ってびっくりしたんだよ」


「え…?」


『え、ちょっ…南の馬鹿!!なんで言うの!』


「あ゙っ…ご、ごめんっ」


「どういうこと?名前」

キヨは少し怒ったような口調になり、私の前にしゃがみ込む


『いや、あの…』

(あーもう南の馬鹿!!)



「俺、何かした?」

彼の真剣な瞳にドキリとする



私が答えあぐねていると、ちょうど授業を開始するチャイムが鳴り響いた

この時ほど授業が始まることを喜んだことはない

…キヨは、時計を一瞥して無言で自分の席へ向かった。彼の背中は、心なしか小さく見えた





「で、結局なんだったんだよ」

さっきのことを気にしつつも探究心が勝ったようで、南が私に問う
授業は、いつもどおり進んでいく



『ちょっと待って…』

私は小声で返すと、ルーズリーフに文字を記す
その間も内容が気になるようで南がチラチラと私の方を見てきて、なんだかおかしかった



『大した内容じゃないからね?』

南に念をおしてルーズリーフを渡す






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ