氷帝
□もちろん!
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『…ねぇ、景吾』
「なんだ?」
『ギュッてして?』
急に景吾の温もりが欲しくなった。
おそらく、これが最後の景吾の温もりとなるだろう。
「…珍しいな、名前から甘えてくるなんて。可愛いじゃねーの」
ククッと笑ってから景吾は、優しく私を抱きしめてくれた。
私は、なによりこの景吾に抱きしめられている瞬間が好きだ。
『…景吾、』
「なんだ?」
『私達、別れよう…?』
さっきまでの甘かった空気が、一瞬で凍りついた。
「…どうゆうことだ?」
全てを見透かすような、ブルーの瞳が私を見つめる。
『やっぱり私と景吾は釣り合わないし…それに、景吾には好きなテニスをいっぱいしてもらいたい』
…景吾のファンの子達に言われたことだ。
釣り合わない、邪魔だ、負担になってる…
考えると、ますます辛くなってきた。
景吾の胸板に顔を埋める。
『景吾の負担になりたくない…迷惑もかけたくない』
「名前、」
『だから……んっ!?』
景吾からの突然のキスに、言葉を紡ぐ術を失う。
「少し黙れ」
景吾の言葉に、ビクリと肩が震えた。
「俺がいつ、お前のことを負担だって言った?迷惑だって言った?」
『……』
「釣り合うかどうかなんて関係ねぇだろ。それに、名前くらいしか俺に釣り合う女はねぇ」
『えっと…』
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