GO夢小説
□一人でも平気
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「今は要のことまで考える余裕がないんだ」
急に告げられ言葉。あぁ、私振られたんだ。それだけは嫌でもわかった。その言葉は私の頭の中で何回も繰り返される。しばらく私も雪村君も黙り込んでいたが、やっと雪村君が口を開いた。その瞬間、繰り返されていた言葉が違うものに変わった。
「ごめん」
『!』
待ってと言う前に雪村君は走り去ってしまい、誰もいないグラウンドにポツンと一人とりのこされた。雪村君があんなことを言った訳は大体予想がついていた。なぜならそれは吹雪コーチがいなくなった直後だったから。
『吹雪コーチには敵わないな…』
私の独り言はふぶいてきた雪によって消された。雪村君の優先順位はきっと私より吹雪コーチ。わかってはいたけど、改めて実感するとむなしい。この日を境に私は雪村君を見かけなくなった。
あの日から何日たっただろうか。すごく遠い昔のことのように感じる。でも、カレンダーを見てみても、一週間ぐらいしかたってはいなかった。一人でもなんとかなるって思ってたのに。
『はぁ…』
ベットに転がり、小さくため息をつく。すると、ケータイの着信音が聴こえた。
『(雪村君…?)』
そう、雪村君からのメールだった。メールには今からグラウンドに来てくれと書かれている。何が何だかわからなかったけど、雪村君に会えると思えば嬉しくてさっさと用意を済ませてグラウンドに向かった。
「要!」
『久しぶりだね…雪村くん』
ただでさえきまずいのに、さらにきまずくなるような言葉しか言えなかった。だが、雪村君の顔は明るい。
「要、出来たんだ!」
『え?』
「今までごめん。だけどそのおかげで…」
『ちょ、ちょっと待って!私…確か雪村君にふられたよね?』
「…………え?」
『だってこの前、私のこと考える余裕がないって…』
「あれ、しばらく話とかメールができないって意味だけど…」
『じゃあただの私の勘違い…』
「…………」
『…………』
「…プッ、馬鹿だな」
『!!そ、そもそも雪村君がわかりにくい言い方するから!』
「いや、お前が馬鹿だからだろ」
『プッ…あはは!』
「なんだよ」
『なんかね、ほっとしたら笑えてきちゃったんだ』
「意味わかんねぇ」
雪村君もあきれていたけれど、笑っている。
『そういえばできたって言ってたけど何ができたの?』
「新しい技。だからこれからは…」
『一緒にいられるね』
「…まあな」
『ねえキスして…』
「!き、キス!?」
実は私達は今までキスをしたことがなかった。
『この一週間私を不安にさせたお返しだよ』
「それは勝手に要がっ…わかった」
期待した私をまっていたのはおでこにキス。
「い…今はこれで我慢してくれないか?」
バッと雪村君の顔を見るとすでに真っ赤だった。それを隠すように私の顔を自分の胸にいれ、抱きしめた。
「好きだ、要」
真っ赤な雪村君を少し茶化してやろうと思ったが、その行為で私の顔も真っ赤に。
『私も好きだよ。これからはもう私を一人にしないでね?』
「あぁ。これから絶対に要を一人にしない」
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