山受けとか
□夏休み
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暑い。
ガキどもは夏休みの真っ最中であろうその日。
高杉は町外れにいた。
八月十五日。
攘夷戦争が終わった日。
侍たちが、負けた日。
「暑ィな」
大きく開いた首元を滴る汗を拭った。
ざ ざ ざ ざ
道ならぬ道を歩く高杉だが、下駄に小石が挟まり不快感に顔をしかめる。
しかし、さらに足を運ぶ。
さぁああああ
ふと、涼しい風が吹いた。
「着いたか」
そこには、大きな石碑。
人目に触れることのないような場所に、ポツリと建てられたもの。
「よォ。久しぶりだなァ」
それは、攘夷戦争で命を落とした侍のために建てられたもの。
毎年、高杉は此処へ来る。
墓参りなんてらしくないかもしれないが、今、俺がここに立っているのはこいつらのお陰でもあるから。
だから、欠かせないんだ。
「高杉か。」
ふと、石碑が喋った。
「ヅラァ?」
のではなく、偶々裏側に桂がいたのだ。
「ヅラじゃない桂だ。貴様もこんなところに来ていたか。お互い、馬鹿らしい。」
本来、こいつと接触したら斬り合いになる。
が、ここは戦友たちの前。
そんな野暮なことは、お互いしようとはしない。
ザ、
足音が聞こえた。
煙管の煙越しに見やると、桂が立ち去ろうとしていた。
「帰ンのか?」
なんとなく、興味はないが訊いてみた。
「ああ。俺には仕事がある。長居をしていては彼らに示しがつかんだろ。」
「そうか。」
相変わらず、クソ真面目な桂を送り出した。
グレーの羽織が遠のいていく。
あんな厚着で暑くないのかと、どうでもいいことをふと考えた。
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