べるぜばぶ

□べたな展開に挑戦する5題(自宅付近編)
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1.誕生日になった瞬間の電話、窓の外にいる彼

学校で、珍しく出された宿題を淡々と解く。
ふと、今何時だろうと携帯電話のサイドボタンを押した。
11:55
「54分、かな。」
俺の携帯は若干早い。正せばいいのだが、面倒だし、たった1分なら許容範囲だと思う。
もうすぐ“明日”になるが、だからどうした。
高校生にもなったら、12時を過ぎたからと言ってそれに執着するような者はいないだろう。
1時2時に寝る人だって別に珍しくないし、時々オールして苦しそうな人もいるくらいだ。それが、高校生。中途半端に大人になったということだ。小学生の頃は、12時過ぎると次の日になったとテンションを上げたものだが。
頭の片隅で考えつつ、最期の問題を解き始める。
きっと、明日は解いてきてない奴一人はいるんだろうな。そう考えを巡らせると、最初に顔が浮かんだのは、三白眼のツレの顔。
そんなことを考えつつ、最期の問題の解答を出した。

〜〜♪〜♪♪〜〜〜

携帯が鳴った。
この音は、着信ではない。
携帯のスケジュール機能で、予定があったりすると音が鳴るように設定してあるものだ。

とは言っても、最近は面倒であまり使っていないし、こんな時間に鳴るのも変だ。
とりあえず、携帯を開いて内容を確認しようと、持ち上げる。
と、
ppppp pppp

「のぁああ!」
今度は紛れもなく、電話がかかってきた。
落としそうになったが、手に持っていたのですぐに出る。
画面には、男鹿辰巳の文字。


「おが?」
『よう、古市。』

聞きなれた、さっき頭に浮かべたツレの声だ。

「どうした?」
『どうしたってお前・・・』

男鹿が少しだけ戸惑うような声を出した。
何か言ってたっけ?
いや、そんな記憶はないな。

『まあいい。窓を開けたまえアホ市』
「アホじゃねぇ。」
『いや、お前は間違いなくアホだ。』

くだらない会話をしながら、ちょっと早いが雪でも降ったかな。
そんな風に考えて、カーテンを開いて窓を開ける。
でも、雪は降っていない。
その代わりに、

「なにしてんだ?男鹿。」

携帯の通話を切った。
古市家の前に、三白眼の男。背中には緑の髪の赤ん坊が寝ている。

俺を見つけた男鹿は、少し大きめの声で言った。

「誕生日おめでとう古市君。自分の誕生日を忘れるような君はアホ市だ。」

先ほどとは違うクリアな声でそう言われて、急いで通話を切った携帯電話のディスプレイを見る。
“11/11誕生日”

そうか、さっきの謎のアラームはこの所為か。

「男鹿ぁ!」

叫んで、窓から飛び降りた。
怪我するって?
そんなはずないだろ?

だって、

どさっ

「あぶねぇな」
「ありがとう。男鹿」

君が受け止めてくれるから。

(まさかのお姫様抱っこだったけど。)

お礼に首に抱き着いてみた。




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