Short

□プリン
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「ちょっとお兄ちゃん、私のプリン食べたでしょ!」






「えっ?あ、ワリーワリー、あれお前のだったの?」





「そ、そうだよ!全く…勝手に食べるのやめてよね…!」





「ごめんって、買ってくるから許して!」






「べっつにー?そんなのいいしー。」





最近、うちの妹がツン期です。




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いつからこうなったんだったっけかなぁ…。
昔は「おにーちゃん!おにーちゃん!」って可愛いくらいに後ついてきて俺のやることなんでも真似しようとしたり、一緒におつかい行ったり、遊んだり、ゲームしたりしたのに…。







「今じゃあれだもんなぁ…。」






「どうしたのだよ高尾。」






「あー、真ちゃん聞いてよー…うちの妹反抗期なんだよねー…。」





「年頃になればそれはだれでも反抗期とやらを迎えるだろう。」





「ん〜、だけどなんだか兄としては寂しくてさ〜…。」





そう、真ちゃんの言う通り、反抗期なんて中学生くらいになれば誰でも一度は通る道なのだ。
俺だって中学生の時はよく親に反抗したりしたもんだよ、ホントこれマジで。
今じゃ親のありがたみがわかってもう拝みたいくらい感謝してるけどさ、そしたら次は妹の反抗期だよ…、まいったなこりゃ。
とりあえず昨日の夜食べてしまったプリンを今日の帰りに買いに行こうと思ってる。
口ではああ言ってたけど、本当は食べたいに違いない、兄だからわかるっていうやつ?
んまー、生まれた時から世話してるし、これくらいはわかって当然なんだけど!
なんだか、あいつのことを一番にわかってるような感じがこれまたたまらなく嬉しい。

ちなみに今は真ちゃんの自主練に付き合って体育館に居残ってるんだけど、まー、こいつも外さないよなー。
何度見ても見とれるくらいに綺麗にスッパスッパゴール決めるもんだから、見てるこっちも気持ちがいい。

まぁ、それを眺めてるってのもいいんだけど、俺は先程決めたようにこれから用事がある。
あいつが大好きなケーキ屋さんによるという用事がな!







「じゃあ真ちゃん!そういうことだから俺先帰るわ!」






「そういうことってどういうことなのだよ!?」






なんだか真ちゃんが言っていたような気がするけど今の俺には聞こえていない。
早くあいつの笑顔を見たい、ただそれだけだ。
あー、俺ってばシスコンとかいうやつなのかな?でも誰でもしたの兄弟なんて可愛く見えるもんだろ?
え?俺だけ?あっはは、また冗談うまいなー。
自転車置き場にある自分のチャリンコにまたがって、そのまま目的地のケーキ屋さんまでかっ飛ばす。
普段チャリアカーとやらで鍛えられた俺の足腰なめんなよ!
5分ほどで目的のケーキ屋さんにたどり着けば、少し息を整えてから店の中に入る。
女の子が好きそうな内装で、今は12月ということでクリスマス仕様になっている。






「あら、和ちゃんじゃない、いらっしゃい。」






「こんにちはおばさん!プリンちょーだい!」






「はいはい、ちょっと待ってね。」






ちなみにこのケーキ屋さんに何度も家族でくるうちに、店主さんとは顔なじみになって今ではもうご覧の通りの仲だ。
小さいころはよくここにあいつとおつかい頼まれたっけなー…。





「はいどうぞ、和ちゃん!」






「ありがと…って、おばちゃん、俺1つしか頼んでねーけど…。」






「いーのいーの!和ちゃんの家にはいつもご贔屓にしてもらってるから、そのお礼よ!」






「ありがとうおばちゃん!!!」






おばちゃんに渡された紙袋の中には二つのカッププリン。
ちなみにそのプリンの上にホイップクリームが乗っていて更にその上にいちごが乗ってるやつ。
俺たち兄妹はこのプリンが一番好きだったりする。
早く家に帰りたくて、でもあんまり急ぐとプリンが型崩れしてしまうかもしれない、なんて考えながらできるだけ急いで自転車のペダルをこぐ。
肌を刺すような冷たい風も、別に気にならなかった。







「ただいまー!」





「おかえり、今日早かったね。」





「あれ?母さんたちまだ?」





「うん、今日は遅番だって。」





「そっか。」






まぁ、帰ってくると妹がこうして玄関まで来てお出迎えしてくれるわけだ。
もうその感じがまた可愛くてたまらない、こうワンコみたいな、俺の帰りを待ってくれてる忠実なワンコみたいな感じが本当に可愛い!
その気持ちに忠実に従って抱きしめるわけにもいかず、俺は妹の頭をわしゃ、となでてからリビングへと向かう。
その時に目ざといこいつは気がついたのか俺が手に下げていた紙袋に気がついたらしい。






「お、お兄ちゃんそれ。」





「ん?あぁ、気がついた?」






「別に私いいっていったのに…。」






「いーの!俺も食べたい気分だったから、ついでに買ってきただけだし〜?」






あー、俺もなんて素直じゃないんだろう、でも『お前のために買ってきた』なんてセリフ小っ恥ずかしくていえねぇよ。
意地の悪い笑顔を浮かべると、それを見た妹はぷーっと頬を膨らませる。あぁ、可愛い。
俺はプリンの入った紙袋をテーブルの上に置いて、学ランを脱ぐ。
そしてドサッとテーブルの前に置かれたソファに腰をかけると、隣の空いている場所をぽんぽんと叩く。







「ワリィワリィ、許して!ほら、座って一緒に食べようぜ!」






「なんでお兄ちゃんと食べないといけないの…。」






そんな悪態を吐きながらも俺の隣に座ってくれるこいつは、なんてもう言葉では言い表せないくらい可愛い、俺ほんと幸せ。
反抗期っつっても、なんだろう、ツンデレな感じなのかなこいつは。
俺が見つめてる間もこいつはガサガサと紙袋の中をあさり、プリンを二つ出してから台所に走り、スプーンを二つ出してくれた。






「ん、お兄ちゃんも使うでしょ?」






「あー、もうお前ほんと優しい。大好き。」






「はいはい。」






あっ、華麗にスルー決め込まれた、俺辛い!
でも、こうして二人であったかい家の中でプリン食べれて俺幸せだよ。






「なぁ名前。大好き。」






「…わかってるよ。」





とんだシスコン兄貴で悪かったな!
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