Short

□名前で呼んでみましょう
1ページ/1ページ





「苗字さん、いきなりですが、お互いそろそろ名前で呼んでみませんか。」



「…はい?」




そろそろ付き合って1ヵ月。
流石に自分が敬語で、お互い苗字呼びというのは堅苦しいにも程がある。
現在神奈川の高校に通っている元チームメイトの金髪にこんな状態を見られたらきっと笑われるに決まっている。
あと欲を言えばそろそろ彼女の可愛い口から自分の名前が出てきて欲しいと思っていた頃だった。




「だから、僕らそろそろ付き合って一ヶ月たつじゃないですか、でもそれなのにお互いに苗字呼びというのはよそよそしすぎませんか?」




「う、うーん…まぁ、確かに…?」




一生懸命言葉を選んで説得していく。
もともとポーカーフェイスな僕はあまり感情を表に出さない。
それを彼女も汲み取ってくれているので、普段、一緒にいる分には何も文句はないのだが…。
僕だって普通の男だ。
可愛い彼女がいるんだからそりゃ目の前にいたら押し倒したい衝動に駆られるし、もっと甘えてもらいたい。




「だから、こうしましょう。お互いに今度から名前を呼び捨てで呼びましょう。そしてもしどちらかが苗字で一方のことを呼んでしまったら罰ゲームを行う。いかがですか?」



苗字さんには悪いが、案外僕はこういうのは得意だ。
だから99%、僕が苗字さんのことを苗字で呼ぶことはないだろう。
彼女は迷っていたようだが、しばらくしてから「うん」と声を出すと右手を出してきた。




「じゃあ宜しくね、テツヤ。」




それを聞いた瞬間、今までにない感覚というか…、なんだか斬新な気がした。





「はい、よろしくお願いします…名前。」




*****************




日曜日。
今日は部活が久しぶりのオフということで普段あまり構ってあげられない分、今日は名前の買い物に付きあうことになった。
待ち合わせ場所に、待ち合わせ時間の5分前に到着する。
大体彼女は待ち合わせ時間ぴったりにくるはずだ。

しばらくしてから人ごみの中から私服の名前がひょこっと飛び出して僕の元へと駆けてきてくれた。
制服姿も可愛いですが、やはり私服の方が可愛いです。
そしてこの人混みの中で僕を迷わず見つけてくれるところにも僕は少なからず魅力を感じています。




「じゃあ、行きましょうか。」




「うんっ!」



そして僕から手を差し出すと、嬉しそうにその手をとる名前。
ぎゅっと離れないようにつなぐと二人で一緒に目の前のショッピングモールへと入っていった。




「そういえばさ。」




「はい。」




名前はまず服が見たいというので、彼女が行きつけのショップへと足を運ぶ。
服を見ながら彼女はチラリと僕の方を見た。




「罰ゲームってなにするの?」




そう、結局、彼女も意外にこういうのに強いらしく、あれからいっかいも僕のことを苗字で呼んだことはなかった。
そうですね…と僕が悩んでから、彼女を見る。




「じゃあ呼んでみればいいじゃないですか、苗字で。」




痛いことはしませんよ。と付け加えると彼女はえーっとなにかご不満のご様子。
でも罰ゲームの内容が気になるのか、呼ぼうかどうしようか迷っているふうにも感じられた。
というか罰ゲームを受けたいって名前はMなんですかね…?
そして次の瞬間、彼女の口からこぼれた単語を僕は聞き逃さなかった。




「…黒子くん。」




呼んだあとにちらりと僕を見て、そして何をするのかどうやら伺っているようだ。
ここはあいにくショッピングモール、今も周りにたくさんの買い物客がいる。
でも、そんなの僕には関係ない。
すっと彼女の前に立つと素早く身をかがめて彼女のやわらかい唇に僕の唇を押し当てた。
彼女は何が起こったのかわからなかったらしく、しばらくはポカンとしていた。
だが、時間が経ってから自分がたった今、僕に何をされたのか気がついたようで、顔を真っ赤にしながら口元を押さえる。
そんな動作が可愛らしくてついつい僕は頬を緩めてしまう。




「くっ、黒子くんここ人いっぱ…。」




チュッ




彼女は気が動転しているらしく、彼女らしくないミスをする。
再びされたことにより更に彼女の顔は赤くなる。
店員さんが名前の顔色に気がつき「大丈夫ですか?」と声をかけられた。
生憎、店員さんの視界には僕なんかが入っているはずもなく名前がひとりでいると思っているらしい。
名前は「大丈夫です」と声をかけてからキッと僕を睨む。
少し潤んだ瞳がとても扇情的で、僕の体が熱くなるのが分かる。
仕方なく、僕は彼女を引っ張り、ショップの片隅にある試着室へと二人で入る。
結構スペースが広く、二人入ってもまだ余裕のある空間だった。




「テツヤ!あんたがどんだけ影薄いからってあんなのバレちゃうから!」




個室に入ったことにより安心したのか彼女は僕に文句の丈をぶつけてくる。
そんな姿も可愛らしくて僕は彼女の頭を撫でる。




「すみません、でも罰ゲームは何かと聞いてきたのは名前ですよ?」




そう言ってしまえば言い逃れができないのか、うぐーっと名前は押し黙ってしまう。
そして手持ち無沙汰になった腕を僕の腰に回してきてぎゅっと抱きついてきた。
もともと興奮している僕に、そんな胸なんて押し付けてもいいと思ってるんですかねこの子は。
はぁ、とため息をついてから彼女を自分から引き剥がす。




「我慢の限界です。」




失礼します、と彼女の胸元に顔をうずめ舌を伸ばす。
それを見てぎょっとした彼女は慌てて僕の仕草を止めに来た。
…あともう少しだったのに。




「ちょ、まってこんなとこじゃ流石に…!」



流石に恥ずかしいのかサッと僕から身を引き、胸元を一生懸命に名前は隠す。
そんな行為でさえも、もはや僕を煽る材料でしかない。
ガッと彼女の肩を掴んでから目を見つめる。
そして次に出てきたのはもう溜め込んでどうしようもない気持ちだった。




「大丈夫です、突っ込むまではいきません、ただ僕の精液にまみれた名前の姿を拝みたいだけなんです。というか僕人一倍性欲強いんですよ、知っていましたか?いっつも名前を見てどれだけ自分を抑えるのが必死だったか、わからないですよね?というわけで別に咥えろだなんていいません、大人しく僕の精液かぶってください、そんでそれ写真撮らせてくださいそれ今夜のおかずにするんで、なんなら今履いているパンツでもいいですよ、僕想像するのなら結構得意なんでそれでも全然構いませんから。」



以後、名前が1週間口を聞いてくれなかったのはわかりきった話であった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ