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□名前で呼んでみましょう
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「名前。」




「はい!」




僕が名前を呼ぶとこちらへと一生懸命走ってくる名前。
今年入ったマネージャーだ。
彼女の家はスポーツジムを経営しているらしく、入部当初から素晴らしいマネージャーぶりを発揮してくれた。
そんな名前は僕の可愛い彼女だったりする。
部活が終わりいつも彼女とは一緒に帰る。
迎えの車がいちいちやってくるが、僕はそんなものには乗らない。
名前との時間の方が大切だ。




「今日から僕のことを『征十郎』と呼べ。」



「えっ…、い、いきなりどうしたんですか…?」



そんな完璧な彼女に僕もひとつは不満がある。
やはり先輩後輩、という立場があるからだろうか。
彼女は付き合ってからも僕のことを「赤司先輩」と呼ぶ。
周りからは割と祝福の声を頂いているから、彼女が周りの目を気にして、ということはなさそうだ。
チラリと名前を見るとすぐ顔を赤くして顔をそらしてしまう。
あぁ、僕は君の可愛い顔を見たいだけなのに。




「名前。」




「は、はい…。」




「ほら、呼んで。」




彼女のやわらかい頬を僕の両手で包み、無理やりこちらを向かせる。
名前は未だ呼ぼうかどうしようか迷っているのか、唇がかすかに震えていた。
だが、やはり彼女はいい子だ。




「せい…じゅ…ろ…。」




かすかな声だったが、確かに、その愛らしい唇から僕の名前がこぼれ落ちた。
そんな彼女を愛おしそうに見つめ、軽いキスを落とす。




「いい子だ、これから僕のことはそう呼ぶように。」




こうは言ったものの、気がついたらまた再び『赤司先輩』に呼び方が戻っているかもしれない。
しばらく考えたあと、僕はいい案を思いついた。




「そうだ名前、もし君が僕のことを征十郎以外の呼び名で呼んだら罰ゲームを行うとしよう。」




それはとっても簡単で、かつ、彼女を他の輩に渡さないようにするとても素晴らしいゲームだった。
彼女はそんな少しご満悦な僕を見て不思議に思ったらしいが、従順な可愛い僕の名前は素直にコクリと頷いてくれた。




「で、でも赤司せん




―――――チッ





…っ!」




「いっただろう?罰ゲームだって。」



僕が思いついた罰ゲーム、それは名前が僕のことを『征十郎』以外で呼んだ時には赤い印をひとつつける、というそういう簡単なものだ。
ほら、これを見たら変な蟲もよってこないし、名前の体に僕の愛の印を刻み込める、こんな素晴らしいゲーム、ほかにはないだろう?
だが、最初は仕方ない、なれるまでにはやはり人間誰もが時間はかかる。
だからまず初めは普段ワイシャツで隠れるような鎖骨につけておいた。

…さて、この子は一体いつまで僕にこの楽しいゲームをさせてくれるのだろう。



*****************




少し天然なところも手伝ってか、名前の体にはもう数え切れないほどの愛の印が刻み込まれた。
体育は冬ということもあってか長袖を着てなんとかうまく隠しているらしい。
これでは意味がない。
せっかく蟲避けを兼ねてつけているのに、まったくあの子はどうしてわかってくれないんだろうね…?




「あか…っ征十郎!」





「危なかったね、今のは仕方がないから目をつむっておいてあげるよ。」




部活中でもそのゲームは続行された、先ほどボトルを持ってきてくれたのだが、あともう一歩のところだった。





「赤ちんって変態だよね〜。」




「それはどうかな、お前にも好きな女ができればいずれは分かるよ。」




「ん〜、そんなもんか。」




まだ部活中なのにお菓子を貪り食う敦の言う通り、僕はかなり変態なのかもしれない。
だが、それは名前が悪いのだ。
僕はただ、目の前に可愛い名前がいるからついついそういうことをしてしまうだけであって、名前が僕との約束をちゃんと守らないから躾ているだけなのだから。




「赤司先輩っタオルで…あっ。」





「今のは確実に言い切ったね、名前。」





「やっ、征十郎!ご、ごめんな…っぁ…!」




―――――チゥッ



ここで脱がすわけにもいかない。
仕方なく僕は首筋に吸いつく。
そしてその吸い付いたあとには小さいけれど綺麗な綺麗な赤い華が咲いていた。
何しろ白い肌の名前の肌にはよく映える。





「征十郎…っ、みんなが居る前では恥ずかしいからやめてください…っ!」




「名前が悪いんだよ、僕との約束を守らないから…いけない子だ。」




目の前で顔を真っ赤にする可愛い僕の名前を今日も今日とて、愛してゆく。
 

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