Short

□キャンディ
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で。



「そこマーク入れ!」


「リバンッ!」


キュッキュッとバッシュで体育館を走る心地よい音。

ダムダムというボールがはねる音。

でもなぜ私がここに居るのかというと…。



「だーから!こいつが転んでたのを助けてやってたんだって!」



「ふぅん、大輝、君にしては優しいことするじゃないか。」



そう、絶賛言い訳に使われております。



「なぁ名前!そうだよなぁ!」



「う、うん…。」



「名前がいうんなら仕方ない…、でも今度から転んでしまったら大輝じゃなくて僕にいうと良い。」


「だぁあああ!なんでそうなるんだよ!」



帝光バスケ部のみんなとはあっくんの紹介で仲良くなった。

だからみんな私のことは名前でちゃんと呼んでくれるし、分け隔てなく教室でも話しかけたりしてくれる。

二人の言い争いに挟まれて私が苦笑いしているとあっくんがこちらへのっそのっそと歩いてきた。



「なに名前ちん〜、転んじゃったの〜?」


「うん、でもそんなに大したことじゃないから…。」



顔の前で手をブンブンと振ればこてん、と首をかしげるあっくん。

こういう動作がいちいち可愛いんだよね、あと甘いもの食べてる時のあっくんも可愛い。

心配してくれたことが少し嬉しくてえへへと笑いかける。

そんな私の手首をあっくんが握り私の手をじっと見つめる。




「…あっくん…?」



「ここ、ちょっと切れてる。」



言うか言わないかのところで。




「!?」




手のひらに感じるねっとりとした感覚。

言わずもがな、あっくんが私の手のひらを舐めたのである。

それを見た赤司くんと青峰くんはぎょっとしていた。




「ん〜、名前ちんあま〜い。」



なんだかご満悦の様子だったので私も何も言えず、ただただあっくんに舐められた手を、あっくんに握られている手首を顔を真っ赤に染めながら見つめるだけだった。
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