ブルーすかい。

□嫉妬、そして。
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シン、とあたりが静かになった。







「…え?」







私はわけがわからなくて思わず声を漏らしてしまう。
だ、だって、今、彼の口からとんでもなく夢のような言葉が溢れてきたから。
次の瞬間、顎をぐいっと上に持ち上げられて、無理やりに彼と目が合うよう動かされた。
目の前には大輝の顔があって、彼の目の中に映る私が見えるくらい近い距離だった。







「だから、好きだ、奈々。」






私が理解をしていないと思ったのか、彼はもう一度区切りながらゆっくりと私へ言葉を紡ぐ。
そのはっきりとした口調に思わず顔を赤く染めてしまう。
あたりは一面ピンクオーラだ。
でも傍から見たら男三人で何やってんだ状態。
でも、でも私は、一応、この目の前にいるガングロに恋する女なのだ。
そのピンクオーラを感じとってか、赤司くんがはぁ…とデカいため息をつく。







「…一応僕がいるということも把握しておいて欲しいんだけど…。」






でもその言葉には案外刺はなくて。
不思議に思って、私の顎を持ち上げている大輝の手をどかしてから赤司くんを見る。







「そんなに心配そうな顔しないで奈々。」






私が微妙な表情で彼を見つめていたからだろうか、彼は苦笑いをこぼしてこちらを見る。
順に、私、大輝へと視線を移してから、彼は再びため息をついた。







「あと、君たちには悪いことをした。」






やれやれ、とでも言うように彼はソファへと腰をかけ、足を組む。
そしてニヒルな笑みを浮かべて横目でこちらを見る。
次の瞬間に開かれた彼の口からは衝撃の事実が出てきた。







「大輝がうじうじしているのが気持ち悪くて仕方がなくてね、もし奈々のことが好きな強力なライバルが現れたら素直に気持ちをはっきりと伝えてくれると思ったんだ。
 だから、すまない、奈々の気持ちを弄ぶつもりはなかったんだが、別に僕は奈々に恋愛感情なんてこれぽっちも持ってないよ。」






赤司くんはそのこれぽっちもを表すために人差し指と親指で小さな隙間を作る。
…彼こんな無邪気でしたっけ?
ぽかーんとする私たちを見て彼はクスリと笑う。







「あぁ、えーっとなんていうのかな。
 別に奈々のことが嫌いなわけではないしむしろ好きだ。
 だけどそれは女としてではなくて部員として、だ。
 でも大輝が奈々のことが好きなのに、告白をしようともせず、涼太の写真集に出ていたのが気に食わなかったみたいでイライラしていたから、告白をする機会を作ってやろうと僕は考えたわけだ。
 …こう言えばわかる?」






どうやら頭の弱い大輝は先ほどの説明ではわかっていなかったらしく、それを赤司くんが察したのだろう。
わかりやすい説明で彼の疑問を解いてくれた。
…えっと、ということは、今までのあれって、全部大輝を私に告白させるための赤司くんの演技だったってこと…?
どうやら大輝も今の説明で全てわかったらしく、とたんにこめかみにびきびきと青筋を立てる。







「じゃあ赤司、テメェ、奈々にキスしたっつったよなぁ?あれも演技のうちっつーのか…?随分演技派じゃねぇか。」







「僕はやることについてはとことんやる派だからね、もしファーストキスならすまないね奈々。」






「ファッ…!?」






えぇファーストキスでしたけどなにか!?涙目ですよ奈々さんは!
クスクスと笑う赤司くんはその言葉を言い切ると、さてと、と言いながらソファから立ち上がる。








「じゃああとは二人でごゆっくり。僕はまだ生徒会の仕事があるから部活の方は頼んだよ。」






そしてそのまま扉を開けて出て行ってしまった。
一応まだ首に腕を回されていて大輝とくっついている状態なんだけど、まだイライラしてるんじゃないかってちょっと冷や汗かいてるんですけどね…!
そんな時に「おい」なんて低い声で呼ばれるから体をびくつかせてしまう。
だけど、彼の口からこぼれた言葉は案外子供っぽいセリフで…。







「…悪かったな…。」







そして首に回された腕の力が強くなったのがわかった。








「…意味もなくお前を避けてたわけじゃねぇんだ、うまく言えるかどうかわからねぇが…。」






そこから彼はポツリポツリと話し始めた。
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