ブルーすかい。

□焼酎と水
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「…何かと思ったら…。」









「…すまない、覚めた。もう覚めた…。」







どうやら、彼、酔っていたようです。
どこかのクラスで飲み物を頂戴した時に、それがまさかの焼酎で、水だと思って飲んでしまった赤司くんはすっかりと出来上がってしまったようだ。
だけど、あそこに来るまでにバレないようにやっていたようだから、さすが赤司様様である。
先ほどの積極的赤司くんはどうやら酔っている故だったらしい。
水を飲ませて風に当たらせていたら意識がはっきりしてきたらしく、申し訳なさそうな顔をして彼は謝ってくれた。






「仕方ないって、お酒飲んだことないなら飲まれる感覚とかわからないだろうし…。
 気にしなくていいよ!ね?」






別に赤司くんが悪いわけではないのである。
悪いのは模擬店に何故か酒を用意していたクラスだ…!
中学校の模擬店で酒を置いておくなよ酒を!!!先生ちゃんとチェックしてください!








「そういえば、あの子達に変な誤解させたまま残してきちゃったね…。」







「そうだな…まぁ僕が奈々のことを好きだというのには嘘偽りはないけれど、あのまま放っておくと大変なことになりそうだ。戻ろうか奈々。」







「うん、そうだね、立てる?」






「あぁ、多分平気だと思う…。」






意識がはっきりとしてきたとはいえ、先程まで酒が入っていたのだ。
立ち上がった瞬間にふらつく、なんてことがあるかもしれない。
赤司くんが先に立ち上がり、大丈夫なようだったので私も立ち上がろうとする。
すると、彼が手を差し出してきたので、ありがたく手をお借りして立ち上がろうとする。
…が。







「っあ!」






ボスンッ!







「…すまない…大丈夫か奈々…?」







「な、なんとか…ご、ごめん赤司くん…。」







どうやら体重は男並みだったらしく、現在身長があまり変わらない私たち、多分体重もそんなに変わらないのだろう。
思ったより重たかった私を支えることができず、赤司くんが私の上に覆いかぶさるように倒れ込んできた。
その時、ガチャリとミーティング室の扉が開いた。
まて、やばい、この体制はまずい。
傍から見たら赤司くんが私を襲ってるように見える。
というか事情を知らない人だったら、赤司くんが公然ホモ行為をしていることになる。
だって見た目私今男だし。
お願いします、せめて知っている人で黒子くんあたりでありますように…とそーっと赤司くんの肩から顔を出す。







「…赤司てめぇ…してもいいことと悪いことがあんだろ…。」







「!」






そこにいたのは、首に青筋を立てた大輝だった。
もう彼戦闘態勢。赤司くん殴る準備いつでもできてます来いよ状態。
ああああまって、まって赤司くん悪くないんだってば…!
私がそのように弁解しようとするとそっと、赤司くんに口を手で塞がれる。







「さっきは済まなかった大輝、少し口が滑ってしまってね。
 でも、言っていたことは本当だよ。僕は奈々が好きだ。」







何この状況で煽ってんの!?!??!??!??!?!??!?
不安になって赤司くんの方を見れば「僕に任せて」なんて口パクで言ってきたけど任せたら不安な感じなんだけどこれ!?!?!??!??!大丈夫なのマジ!?!??!??!
ほ、ほうら見なさい!目の前にいる大輝の首に青筋さっきよりたくさん立ててるよ!?
これもうマジおこだよ!?大輝マジ怒プンプン丸だよ!?…あ。なんか可愛いかもしれない。
そんな大輝は今にも殴りかからんとしているのだが、一向に行動に移ろうとしない。
しばらくその均衡状態が続いたあと、大輝ははぁー…と盛大なため息をついてくるりと体の向きを変えた。







「…そーかよ。まぁ、奈々もまんざらでもなさそうだし、いーんじゃねぇの?」







じゃあな、とそのまま大輝は扉の方向へ向かってしまう。
ま、まって誤解なんだってば…!と半泣き状態の私だったが、まだ赤司くんが私の口を抑えている。
これが意外にも力が強くて引っペがせそうにない。
今すぐ叫んで彼の元へと行きたいのに、体の上には赤司くん、口には赤司くんの手。
本当に、もどかしすぎて涙が出そうだ。
…そんな時だった。







「逃げるのか?大輝。」







赤司くんが、彼の後ろ姿に声をかけた。
その言葉に大輝はピタリと止まる。
そしてその態勢のまま数十秒。もしくは数秒だったかもしれない。
赤司くんの体越しでしか見ることができないので、彼の全身を見ることはできないのだが、肩が震えているのがわかる。
…次の瞬間。

ため息が聞こえたと思ったら、彼はくるりと再びこちらへと体を向けた。







「赤司、お前そこからどけや。」






そしてなんともかったるそうに、赤司くんへと言葉を投げつけた。
首を手で抑えて、あの、首痛いよポーズしてる。
ふ、ふざけてないもん…。よく漫画でやってたじゃん大輝…首痛いよポーズ…。
ちょっとリアルで見ることができて感激してるのは内緒。







「どうして?何か理由がないと、僕はここからどく気はないよ。」







そんな大輝を相手にここまで飄々と対処できる赤司くんもすごいけど…。
大輝はかったるそうにしながら敵意丸出しの視線で赤司くんを射抜いているというのに…。
あんな目で見られたら多分私そのまま死にそう、こ、怖すぎて…!
表情を変えない赤司くんに余計にイライラしたのか、大輝はガシガシと頭を掻いてこちらに近づいてくる。






「あー、もうごちゃごちゃうるせぇな…!」






そして次の瞬間に感じた開放感。そして再び感じた抱擁特有の暖かさ。
気がついたときには目の前に赤司くんがいて、そして背中に感じる体温は赤司くんじゃなくて…。







「俺が奈々のこと好きだからだよ、文句あっか赤司。」
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