ブルーすかい。

□文化祭前日
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「すまない奈々、何もなかったか?」





ここで止まっていてもなんだし、と思い私は先ほどナンパされてしまった現場からとりあえず離れて赤司くんに一応メールを入れて改札口へと向かった。
案外彼はメールを送ってからすぐに駆けつけてくれ、先ほどの女の子達がかなりしつこかったと愚痴をこぼす。






「いくらしつこいとはいえ相手は女性だ。あまりきつくあたってしまってもかわいそうだろう。」





と、肩をすくめる彼はやはり紳士といったところか。
暗くなった道を二人で無言で歩く。
というか口を開くことすら私にはできなかった。
先ほど助けてくれたあの頼もしい後ろ姿が、あの人以外…大輝以外に思えなかったから。







「…奈々?」







「え?あ、あぁごめん!ちょっとぼーっとしてた!」







ヘラリと即興の笑顔で返すとやはり彼はそれを見抜いてしまうのかすぐさま不満げな顔になる。







「奈々、僕に隠し事なんていい度胸しているじゃないか。」






「えっと、そういうわけじゃなくて!本当にちょっと考え事してただけだから!」






「僕が隣にいるのに考え事だなんてそれもそれでいい度胸してるね。」







「ひいいいごめんなさいいいいいい。」






「全く仕方がない子だよ奈々は…。」







なんだか赤司くんがお母さん化してる気がするけど気のせいだよね!
私の中ではキセキの世代で一番お母さんっぽいのは真ちゃんだと思ってるから!
それからは赤司くんが矢継ぎ早に話を降ってくるので私が相槌をうったり、その質問に対して返答したりとなんだか少し一方通行的な会話をしてしまって、彼には申し訳ないと思ってる。
ちょうど家に近づいてきた頃、赤司くんはマンションの入口の前で止まり、少し儚げな顔をこちらに向ける。






「…僕は奈々といるだけで楽しいと思えるけど、奈々は違うのかな?」





なんだか、初めて彼が弱いところを見せてくれた。そんな気がした。
その表情、その声、その言葉にドクンと心臓が波打ち、思わず私は黙ってしまう。
というかこんな真面目なシーン私には合わないよ…っ!とか思っちゃってごめんなさい…!
私が黙っていると、とたん、赤司くんは表情を改め、いつものすまし顔に戻った。







「すまない、変なことを聞いたね、今日は色々とありがとう、疲れただろうからゆっくりとお休み。」






くしゃりと私の頭をなでてそのまま彼はさってしまう。
漫画を読んでる時には怖いと思っていた彼だけど、こうして触れ合ってみるとわかる、本当は、本当の彼は優しいんだ。
彼の優しさに頼ってしまった自分の弱さに喉の奥がきゅうっとしてちょっと苦しくなった。
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