ブルーすかい。

□夕焼けこやけで日が暮れて
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「ごべんなざい…ハンカチ貸してもらった上に、胸まで貸していただいてそれに送ってくれて…。」






「いや、気にしなくていい。僕らは人間だ。たまにはこういう日があったっていい。」






そういい、爽やかな笑顔を浮かべる彼はどこまでも眩しい。
きっと、彼ならば泣いている女の子ほうっておけないんだろうなぁって勝手に思ったり。
そういえば赤司くんとこうして話しながら帰るの初めてだ。
いつもなんだかんだで生徒会の仕事とかで帰りが遅くなるらしく、私たちとは帰らずに学校に残ることが多かった。
他愛のない話をしながら、帰り道をたどる。
隣にいる人が違うだけでこんなにも話の内容や見える景色が変わるものなんだなぁと改めて感じた。
赤司くんはもう誰から見ても美人だし、美形だし、隣にいるのが私なんかでいいのかなって。
トントンと肩を叩かれれば赤司くんが「今の、聞こえた?」と聞いてきたので、なんのことか分からず私はぶんぶんと首を振った。





「僕たち、『お似合い』だってさ。」





「ふぁっ!?」





ニヤ、と彼からは想像できないような悪戯っ子のような笑みを浮かべ、こちらを見てくる姿に不覚にもドキっとしてしまったのは秘密だ。
というか、そんな顔もできるのか、反則だ。
少し赤くなってしまった顔をそらすように赤司くんとは反対の方向を向く。
彼はそれが面白くなかったのか、私の手を取り、ぐいっと引っ張ってスタスタと早足で歩いてしまう。





「ちょ、ちょっと赤司くん!?」





声をかけても何も返答がない。
こ、これはまずいことになった。彼を怒らせるなとバスケ部のみんなから散々言われていたんだけど、ついにやってしまったのか…!
これ以上機嫌を損ねてしまってはまずい、とりあえず私はそんな彼に頑張ってついて行くことにした。
…というか手つないでるから付いてくしかないんだけど…ってあれ…?
な、なんかナチュラルに手を繋いでる…!?

気がつけばうちの家の前で、そこで赤司くんはぴたっと止まる。
…というかうちの場所把握してたのね…さすが…。





「ひとつ。」




ふいに赤司くんが口を開いた。






「命令をしておくよ。」





命令、という言葉にビクリと体を震わせる。
や、やっぱり怒らせてしまったのだろうか…!
あれかな…毎朝赤司様の家にお迎えに上がって荷物持ちとか、毎晩赤司様の帰りを待って荷物持ちとか…!?そ、そういうあれかな…!
い、いや違うかもしれない、なんか飲み物飲みたくなったら買ってこいとか、学食で限定メニューを死守して来いとか、そ、そんな感じか…!?
だくだくと冷や汗をかく中、スッとこちらに向けられた赤司くんの目は真剣そのもので、見られたこっちは知らず知らずのうちに背筋が伸びる。
次口が開かれた時にはどんな罰を言い渡されるのか、恐ろしくて仕方がない。
ゆっくりと開く彼の口にぎゅっと目を瞑る。
が、彼の口から漏れ出たのは単なるため息だった。






「…え、えと、赤司くん…?」





そんな彼に拍子抜けした私はぽかんとした顔をしてしまう。






「全く、そんなに身構えられちゃ言いにくいんだけど…。」





「あ、あはは…。」





や、やはりバレていましたか…!
彼は握っていた私の手をゆっくりと解き、私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。
その行動の意味がいまいち読み取れなくて私は首をかしげた。






「改めて命令だ。僕の彼女になって欲しい。」





ザワッと揺らめいたあたりの木と反対に、私は彼の言葉に驚きすぎてもはや何も言えない。






「すまない、今までこういうことをいったことがなくてどう言えばいいのかわからないんだが…命令、では拒否権がなくなってしまうな…。」





そんな彼は私が困っているとでも思ったのか、何か別の言葉を用意しようとしてくれている。
あ、あの、今、彼、「僕の彼女になって欲しい。」って言いましたか…?
私の聞き間違いじゃないですか…?
うーん、と目の前の綺麗な顔をした男の子は悩んでいたが、やっと答えが出たのか、あぁ、と声を漏らす。





「そうか、思えば簡単なことだったな。」





クスリと笑えば彼はずい、と顔を近づけてくる。
とりあえず彼の先ほどの言葉で脳内がパンク状態に陥っていた私は今現在何をされようとしているのか見当もつかなくて。




―――――――ちゅっ






「!?!?!?!?」





何か唇にやわらかいものが押し当てられたとわかったあと、急に抱きしめられる。






「好きだ。奈々。」





いきなりそんなこと言われても、私には何もわからなくて、ただただ呆然とすることしかできなかった。
え、えと、何この展開…!?
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