ブルーすかい。
□練習試合
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「はっ…!」
気がつけば教室にいた。
キョロキョロとあたりを見渡すとまだ朝のSHR前のようで、生徒たちはみなてんでに話したり騒いだりゲームをしたりしていた。
となりをちらりと見れば珍しく大輝は起きていて、私の視線を感じたのかジロリとこちらを見やる。
「やっと正気に戻ったのかよ…。」
「お、おおおおおはよ…あの、ああの、私がどうやってここまで戻ってきたかご存知ですか…!」
大輝の顔を見ると昨日のことを思い出してしまってどうしてもしどろもどろになってしまう。
目を泳がせながらなんとか言葉を紡ぐと彼から盛大なため息を頂いてしまう。
「俺が運んだ。」
「…ふぁ?」
「だから俺が運んだんだっつの。」
「え、えとどのように…。」
「脇に抱えて。」
「随分と雑だなオイ!?」
ちょっとでも期待した私が馬鹿でありました。
ふ、普通さ、こう、こういうイベントがあるときってお姫様だっことかさ…なんじゃないです…かね…。
自分で言ってて恥ずかしくなってきたよどうしよう…。
でも運んでくれたのは確かなんだし、一応お礼を言っておこう。
「あ、あの大輝ありがと…。」
「…おう。」
随分とぶっきらぼうな返事だけど、別にそれは彼の機嫌が悪いわけではなく、ただ普通に返事をしてくれているだけだというのを私はわかっているので返事をしてくれただけよしとして彼から視線を外す。
それにしても私をわざわざ運んでくれたなんて嬉しいな〜、とか考えると思わず笑顔になってしまう。
ご機嫌のまま朝のSHRを迎え、それから1時間目の準備へと取り掛かる。
…取り掛かろうとした…。
「奈々〜〜〜〜〜!!!!エネルギー補給させて欲しいっス〜〜〜〜!!!!」
「っげ!?」
今日の私はとことん運が悪いらしい。
おは朝見るべきだった…!と思いながら抱きついてこようとする涼太を青ざめる顔で見る。
あぁ、また抱きつかれるんだろうな…そしてここは学校…ファンの女の子は廊下で待機…。
この現場を写真に収められて学校の黄瀬ファンに干されるんだ…あぁ、ぐっばい私の学生生活…。
次の瞬間に来るであろう衝撃に備えるために目を閉じ体に力を入れる。
…が、いつになっても抱きつかれる感覚はなく、おそるおそる目を開くと目の前には誰かの背中。
「おい黄瀬テメェよぉ…分かってんだろ…こんなトコで抱きつかれたら奈々が迷惑だってよぉ…。」
「わ、わかってるっスけど…。あ、ならあれっスね!人影の少ないところに行けば…!」
「俺が許さねぇ。」
ぐっと顔を上に上げるとそこには大輝が。
どうやら私に抱きつこうとしている涼太を止めてくれたらしい。
そして何やらお二方火花を散らせてどうしたのですか…!
「なんなんスか…、青峰っちは奈々のお父さんかなんかっスか…!」
「は?なにいってんだテメェ、俺にこんなでかい娘がいると思ってんのか?」
「い、いやそう言う意味じゃなくって…!」
というか火花散らしてるのに大輝の頭が弱いせいでなんか涼太がかわいそう!?
な、なんとかしてとめなきゃ…!
しかももうすぐ一時間目始まるし…!
おろおろとしながらも決心をして私はふたりの間にバッと入ってふたりを引き剥がす。
「ちっ、痴話喧嘩はやめてっっ!!!!」
…一瞬自分でも何を言ってしまったのか分かっていなかった。
気がつくと周りの人たちは皆こちらを見ていてシンとあたりは静まり返っていた。
「…おい、聞いたか今の。」
「痴話喧嘩って言ってたよな…。」
「てか奈々ちゃんって男バスのマネージャーでしょ…?」
「結構有力よね…。」
「…つーことはあのふたりってホの字…!?」
「うっわ…大スクープじゃんこれ…!」
気がつけばよからぬ言葉ばかり飛び交い、噂の中心となっている彼らは唖然としていた。
そしてその元凶である私は…。
「ご、ごめんなさあああああい!!!!」
「ちょっと奈々!?そんなこといって逃げられると信憑性増しちゃうんスけど!?」
「おい奈々!!!!どうにかしろ!!!!」
後ろから聞こえる声を無視して逃げ去ったのでした…。
このあと、二人が赤司に泣きつき、この噂をかき消してもらった。
よ、よかった。