ブルーすかい。

□そして影は言った
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「いやぁ…さつき今日はごめんねー…。」





結局、あのあと仕事があるかどうかわからなかったが体育館へと向かった私に待っていた仕事はなかった。
さつきと他のマネさんたちが一生懸命やってくれたらしい。それを聞いた私は少々申し訳なくなった。





「いいのいいの!奈々はテツ君とお話があったでしょ!選手のマネージメントも立派な仕事よ!」





そう言ってさつきは笑って許してくれた。
この子…女神や…!
ジャージから制服へと着替え終わると、更衣室から出る。
…と、そこには。




「…よぉ。」





さつきは前からこの登場がわかっていたかのようにニヤリと笑ってから、私の肩をポンッと叩いた。





「じゃあ奈々!私今日テツくんと帰る予定だから邪魔しないでね(はぁと)」





「えっ、あっ、うん…?」





もともとさつきと帰るつもりだったのだ、誰と帰るというのだろうか。
タタタッと男子更衣室の方へと姿を消してしまったさつきに遅からず手を振れば、当然チラリととなりを見る。
そこに立っているのはふあぁと大きなあくびをかましている青峰くん。
多分、青峰くんと帰れってことなんだろうなぁと我ながら親友の安易な考えにため息が出た。
そんな彼は私の腕をぐいっと引っ張るとずりずりと私を引きずりながら出口へと向かう。






「えっと、青峰くん?」






「帰んぞ。」






「で、ですよねー…。」





なんとなく、今日は一日彼を心配する人たちの話ばかり聞いていたから少し気まずいなーなんて…。
ずっと引きずられるのも癪なので、とりあえず青峰くんの歩幅に合わせて一生懸命歩く。
…が、かなり早い、いやかなりじゃないめちゃくちゃ早い。
校門に行く頃にはもう既に私の息は上がっていた。






「あおみねっくん…はや…っ。」





その私の言葉でやっと気がついたのか、彼は掴んでいた私の腕を離し、頭をがしがしと掻きながら「わりぃ」と小さく言葉をこぼした。
そしてゆっくりとなる歩幅にようやく私もあわせて歩くことができるようになった。
そうしてどれくらい歩いただろうか。
気がつけば自分の家の近くまできていた。





「奈々。」





いきなり声をかけられびっくりするも、青峰くんはこちらを見るつもりはないらしい。
とりあえず私だけでも、と思い彼を見上げる。
まだ夏が過ぎたばかりとはいえ夜は冷える。
空を見れば綺麗に星が瞬いていた。






「今日勉強会だろ?」





そう言われて、私は思い出した。





「あっ。」





かんっぜんに忘れていた。
今日は色々とありすぎて頭の中が混乱していたのだ。
まぁ、でも青峰くんは珍しく勉強をするつもりだったらしく、最初から私と一緒に帰るつもりだったらしい。





「忘れてたのかよ…。」





はぁ、とため息をつかれればこちらとて何も言えまい。





「も、申し訳ないです…。」





頭を下げて反省する。
忘れていたのはどう考えても私が悪い。
しかも、なんかご褒美全員分用意してあげようとか思ってたけどそれもかなわないままだ。
…ちなみに涼太へのご褒美は昨日のモデル代行で勘弁してもらおう。
結局彼にあの時わたしそこねたシュークリームもあげてないし、青峰くんには何もしてあげてないなぁ…と申し訳なくなる。
だが、そんな彼は私の目の前でしゃがみ、私の顔を覗き込むとニッと笑顔を向けてきた。
そんな彼の行為に驚いていると青峰くんはとても可愛いことを言ってくれた。





「じゃあ、奈々の料理食ってみてぇ。」
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