ブルーすかい。

□試合開始!
3ページ/4ページ





その後赤司くんが仲裁にはいりやっと試合が再開される。





「てめぇら…これが終わったら覚えとけよ…。」




「なんで青峰っちがそんなにキレるんスか〜?ねー紫っち〜。」





「ね〜。」





「こいつら…っ!」





珍しく息が合っている涼太とむっくんを見て少々苦笑い、白ボールということでむっくんが外から内にボールを入れる。
それを受け取った黒子くんはためらいもなくその場でイグナイトのフォームを取る。
お…おぉ!本場を見れる…!?
研究をするためにその姿をじっと凝視する。
そして一気にコートを駆け抜けたボールを緑間くんが危なげながらキャッチをし、落ち着いてスリーを決める。





「黒子…やはり俺にはあのパスは向いていない…。」





「すみません…それでも軽くしたつもりなんですけど…。」





やっぱりあのパスの威力は相当のものだ。
黒子くんも非力とか言われているけれど、やっぱりそれでも男の子だ。
女の私なんかよりは比べ物にならないくらい腕の筋力があるに違いない。
体育の時間に私のイグナイトを受け止めた青峰くんはどう感じたのだろうか。
ちらりと彼を見ると、どこかさみしそうな顔をして黒子くんを見ていた。
…そんな顔をするんなら、ライバルなんかいなくたってバスケをやればいいのに…。





「奈々、お返ししてやれ。」




でもそんな思考は赤司くんからのパスでかき消され、私は次に繰り出すパスに全神経を注ぐ。
力はないけれど、黒子くんにより近いパスを、彼に届けるために。

私の手によって押し出されコートを一気に駆け抜けたボールは、ゴール下にいた青峰くんの手のひらに吸い込まれるように収まり、バシィッと気持ちの良い音がした。
音を聞く限りまだまだ黒子くんには到底及びそうもないけれど、でも、受け取ってくれた彼が一瞬でも笑顔を見せてくれたからいっか。





「ここは通さないよ峰ちん。」





「わりぃがめちゃくちゃ気持ちいいパスもらったんだ、外すわけにはいかねぇんだよっな!」





クンッと体を後ろに倒す青峰くん、そしてそのままむっくんの大きな体の上をすり抜けるようにボールを放り、ゴールネットを揺らした。






「ナイスパスだったぜ奈々!」






そしてそのあと、こちらに笑顔を向けてくる青峰くんに私も笑顔で答えた。
誰もが、そんな青峰くんを見て驚いている。
ちょっと前まで、バスケをしている青峰くんからは笑顔が消え去っていた。
相棒である黒子くんにさえ、冷たい態度をとるようになり、いつしかチームから、バスケから離れていった。
そんな彼が、今は笑っているのである。
ちらり、とさつきの方を見ると、思っていたとおり、口元を手で覆って涙を流していた。
彼を一番に心配していたのはほかの誰でもないさつきだろう。
そんな彼女を見て苦笑いをこぼしながら、私は試合へと戻った。

10分間の試合はあっという間で、すぐに終わってしまった。
だが、そのゲームの後とゲームが始まる前とでの私の扱いの差は見て分かるほどに変わっていた。





「しっかし、うちのマネージャーにこんな凄い奴がいたなんてなぁ!
レインアップもボール運びも1軍のやつらと遜色ねぇし、ふっつーに試合でも使えるんじゃねぇか?」





虹村先輩なんか典型的な例だ。
この学校のバスケ部の皆はやはり実力主義らしく、バスケの上手い奴は尊敬するし、下手な奴は論外だ、という考えなのだろう。
しばらく1軍の選手たちにもみくちゃに褒められ、私はマネージャーの仕事に戻った。





「それにしても…奈々あんなに凄かったんだね…。」





「そんなことないよ!でも、こっちでこんなふうにバスケ出来るなんて思ってなかったし、嬉しかった!」




私が嬉しそうに笑えばさつきも同じように笑ってくれる。
先ほど使ったビブスを今日は二人で洗濯し、干すことになった。
久しぶりにこうして一緒に仕事をするからそりゃ手も動けば口も動く。
こうしてたくさん話すのも久しぶりでなんだか話していくうちにお互いの距離がもっと縮まっていくようだった。
だが、しばらく二人で洗濯機の前で当たり障りのないことを話していたのだが、次の瞬間にさつきが意を決したように口を開いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ