ブルーすかい。

□専属家庭教師です
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結局、あの後夜も遅いということで(あくまで中学生の基準で)皆を帰らせた。
麻美は「黄瀬くん電話番号教えて!メアドも!」とか図々しく黄瀬くんに聞いていたが私がなだめて終わらせた。
い、いやぁ、女の子の対応になれているはずの黄瀬くんをあそこまでたじたじにした彼女がすげぇ。
というかもし黄瀬が仮に彼女に電話番号とメアドを教えていたら彼の携帯電話がひどいことになっていただろう…安易に想像できる。
カレンダーを確認すると今日は金曜日らしかった。
学校の方には赤司くんが手を回して病欠ということにしてくれた、本当に彼には頭が上がらない。
…からあの3大馬鹿にお勉強なるものを教えなくてはいけなくなった。
そりゃ確かに秋の中頃にやる中間テストの結果次第でそこから冬休み前の期末テスト前まで放課後補修なんて言われたら別に教えてもらわなくても必死にやるだろうになあ…とか思ってたんだけど。




「あいつらは、自分が特別だと自覚している分たちが悪い、部活に参加しなくても大丈夫だろうと心のどこかで高をくくっているように俺は見えるんだ。
だからね、奈々。君の力が必要なんだ。生憎、僕は生徒会の仕事、部活の主将という立ち位置に立っている以上彼らにかまってあげられる時間は十分に取ってやることができない。だから君に頼むんだ、できるね?」




こうやって赤司様に言われたらやるしかないでしょうううううっ!!!!
いやね、あなた、あんなに笑顔が怖いだなんて私生まれてこの方思ったこと無かった!
すげえ!びびった!あんなに怖いなんて!赤司様やべぇ!
きれいな顔立ちしてる人ほど怖いっていうよね!え?違うって?いやいやそれはたぶん表の顔だけしか見たことがないからいえるんだよ!
ということで、明日から早めのうちから取り組んだ方が奈々の為だぞ、と恐ろしいことを言われてしまったので仕方ないので明日からやることにした。
部活があるということでやるのは部活の後から。
ちなみに明日の部活は1日練習らしく、私は朝退院手続きがあるため、午後からの参加となった。
バフンとベッドに体を沈めると私は静かに目をつむった。
…そういえば3人一気に教えるのかな、それとも1人ずつなのかな…?




***************




「こんにちはー…!」




体育館へとひょこっと顔を出すと丁度部活の昼休み時間だったらしくみんなてんでにご飯を食べたり休憩をしたりしていた。




「奈々ちゃんじゃんー!」



「もう体平気−?暑いし無理すんなよー!」



といろいろな方から声をかけていただけて本当にうれしかった。
一人一人にぺこぺこしながら、私は目的の人物の元へ。



「むっくん!」




そういえばまだ呼んでなかったなぁ、なんて思ってこの機に思い切って呼んでみることにした。
そうすれば声をかけられた本人はむくりとその大きな体を起き上がらせてこちらを見る。




「なーにー奈々ちん、さっちんみたいな呼び方してー。」




先ほどまで寝ていたのかふぁああと大きなあくびを一つ。
そう、昨日考えたのだがどうも3人をいっぺんに呼んでいっぺんに教えるのは一見、楽なように見えるが、彼らのように勉強がからっきしの人たちには向いていない。
むしろマンツーマンで教えた方が早く終わると私は踏んだのだ。




「昨日赤司くんが言ってたやつなんだけど…。」




といっただけで彼はかなりいやそうな顔をした。
いや、確かにね、うん、分かってるよ。勉強めんどくさいもんね!



「俺勉強とかきらーい。」




そういうだろうということは前々から予想はついていた。
というかむっくんならこういうこと言うって簡単に想像できてた!
そんな私は馬鹿ではないのです!
ふっふっふ、と笑えば気味の悪そうな顔をしてむっくんがこちらを見つめている。
…そんな目で見つめないでちょっと傷ついた。
ってそんなことはどうでもいいとして…!




「むっくんががんばって勉強理解することができたらご褒美あげられるんだけどなぁ…。」




普通の中学生なら引っかかりそうもないこの言葉。
だが目の前の中学二年生は違う。
私のこの言葉を聞いて先ほどのいやそうな顔はどこへやら、パッと目をきらきらと輝かせてこちらを見てくる。
…やっぱりむっくんって子ど…なんでもない、かわいいなぁ…。
そう、今朝、家に帰った後に最初にむっくんを呼ぼうと決めていた。
だから私はちゃちゃっと家にあった材料でロールケーキなるものを作ったのだ。
というかあの家やべえ、なんでオーブンあるの、しかもロールケーキが焼けるあの四角い型まであったんだけど、私のために両親がそろえてくれたのかしら!!!!




「奈々ちん、俺、勉強する!」



「よっし!よくいったむっくん!じゃあ今日の帰りに…。」




そこで気がついた。
まだどこでやるかを決めていない。
ロールケーキは生憎家でお留守番をしてもらっている。
こんなところに連れてきたらたぶん熱で生クリームが溶けてしまう。
だから学校でやると勝手が悪いしー…と自分の計画性の無さに腹が立ってしまう。




「あのさ、もしやるとこ決まってないんだったら俺奈々ちんの家いってみたいな〜。」




広いんでしょ〜?とコテンと首をかしげるむっくんに私はノックアウトした。
えーっと正確に言うと彼のかわいさに負けて反射的に「おっけまかせろ」と言っていた。
いやだってかわいかったんだもん。というかこんなに体が大きくてかわいいっていうのも反則的ですよね…、私だってかわいくなりたいのにウォオ!
やったぁーなんて腕を万歳してから私を抱きしめる感じもどっからどうみても子どものそれで、本当に癒される。子どもが好きな私としては母性本能をくすぐられるというか…
むっくん…君良いスペック持ちすぎ…あれだろ、子どもっぽいけど男っぽいところも持ち合わせてるから…あぁ、子どもが好きな女の子ノックアウトできるよ君…
その瞬間ピピーと笛が鳴りお昼休みの終わりを告げた。
むっくんはよいしょ、と立ち上がってまたね奈々ちんと私の頭をわしゃっとなでて集合場所へと向かった。
…だからそういうのがずるいんだってば全くもう!
むんっと鼻息を吹き出し、私も仕事へと走る。
そういえばあの後灰崎とかいうあの人は、赤司君の手によって転校させられたらしい。
いや、赤司君の手によってというのは語弊がある。ある意味彼の手によってということだが、彼がしたのはあくまで「裏で手を回しただけ」らしい。
…いや、その裏で手を回しただけで転校させることができるってどういうことなのよ…。
でもそんなところをつっつくと後からひどいことになりそうなのであえて放っておく。




「奈々!もしきつくなったら言ってね!ある意味体調がいいわけじゃないんだから!」




ビブスの入った大きなかごを抱えて洗濯機へと向かっているとさつきが後ろからボトルを大量に抱えながら走ってきた。
私はさつきに大丈夫だよ、と口で告げて笑顔を向ける。
その言葉にさつきも安心したらしく水道へと向かっていった。
本当に優しい子だなぁ、私もさつきみたいな女の子になれたらいいなぁって改めて思った。




「さて!」




私もがんばらなくちゃな!
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