ブルーすかい。
□男前の名は伊達じゃない
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その後、私が前にいた世界ではバスケをやっていたこと、結構強豪校のキャプテンをしていたことを伝えると青峰くんに「勝負しろよ奈々!」とか詰め寄られるし、さつきには「奈々がこんなにイケメンとか…というか今の姿と違いすぎ…。」と時折顔を赤らめながらこっちみてくるし…
さ、さつきって意外とミーハーなのかな?
「まぁ、とりあえず、いろいろと驚きな部分はありましたけれど、奈々さんが僕らのもとに戻ってきてくれて本当にうれしかったです。」
黒子くんの言葉に皆動作をそろえて頷く。
そして微笑みながら私を見てくれるみんなに私も笑顔で答える。
決して向こうの世界に戻りたくないとかいうわけではない。
むしろ向こうにいったりこっちに来たりできるんならそっちの方がいい。
…というか今回はなんでこの世界に飛んでこれたんだろう。
まさかこれも神様のおかげかしらうふふ〜、なんて考えているといきなり携帯が鳴った。
ピロロロ〜と軽やかな音楽を奏でているのは私の携帯だった。
こちらの世界で私の連絡先をしっているのはここにいる7人と学校側だけなのだが、まさか学校から連絡がくるわけもない。
そして鳴りやまないところをみると電話だろう。
誰からだろうとさつきから携帯を受け取り画面をのぞくとそこに映し出されていた名前は親友の名前だった。
あー、こりゃ怒ってそうだと苦笑いしながらみんなに断ってその場で電話に出る。
「奈々!!!あんた私に連絡してっていったじゃん!!!ケーキバイキングから帰ってきてケーキ持っていこうとしたらもう寝てるしつっついても起きないからもしかしてと思って電話かけたら出るし、なんなのまったくもうおこっちゃうよ!麻美さんめちゃくちゃ怒っちゃうよ!」
携帯を耳に当てていなくても聞こえるような大声で息つぎもせず電話相手である親友はギャンギャンと私に文句をたれる。
周りにいる7人の中学生たちは唖然としていた。
い、いやたしかに大人になってもこんなに子供っぽい大人も珍しいと思うが。
ふぅ、と溜息をつけば「今溜息ついたでしょ!」と怒られる。怖い、溜息まで聞こえてる。
「ごめんごめん、そんな怒らないでって、私もまさかこのタイミングでこっちに飛んでこれるなんて思ってなかったし、気が付いたら飛んでたから連絡できなかったんだって、というか…電話…が通じてる…だと…!?」
おい!?電話通じなかったんじゃないのか!?
まった、なぜ通じている!?
「そんなこと別にいーじゃんー、通じてるんだからさー現に。」
この楽天家の親友をどうにかしてくれ。
再び周りを見ると口をポカーンとあけてびっくりしているんだか呆れているんだか。
あ、赤司くんは呆れてるぞこれ、だって溜息ついてるもん。
電話の相手が先ほど話した親友の麻美だと告げると皆黙りこくった。
いや、確かに彼女のことは少し美化して話すぎたかもしれない。
周りのことをよく見ていて考えられるすごく素敵な女の子みたいな紹介した気がする私。
そういえば確か麻美って黄瀬好きだったなー、ここで黄瀬くんに変わったら面白そうだなー、とおもってとりあえず黄瀬くんに携帯を渡す。
「ごめん、黄瀬くん、なんでもいいからそのことお話してあげて、そのこ黄瀬くんのこと大好きなの。」
「…ま、任せろっスよ。」
『その声は黄瀬くん!?うわああああああああああああやっべええええええええ死んでもいい!!私死ぬ!!!なにこれ、うわ、うわあああすみません、名前呼んでもらってもいいですか!』
気持悪い親友でごめんなさい!!!!!
黄瀬くんは親友のご命令通りに名前を何度も呼んであげていて、それを周りで見ていた他の6人は苦笑い。
そして私の隣を陣取っていた赤司くんはそういえば、と思い出したように私に向き合う。
「そういえば奈々。ひとつ言いたいことがあったんだった。」
ニコリと笑う彼に悪寒を覚えた。
ちょっとまって、私なにかしたか、いや、あ、黙ってみんなの前から消えたや、あるぇ、ちょっとまって私それさっき許してもらった気がするんだけどあるぇえええええ!?
と思ったがそんなことではないらしく。
彼にとって結構大事なこと。
「この前のテスト…そりゃあお前が満点取れるのは当たり前だよね、もうすでに習ったことのある単元だったんだから。」
そっちかあああああああああ!!!!!
「そ、その件は、あの、いや、確かにそうですけれど。」
でもその、いや、でも赤司くんになんかはりあえたら面白いなーとか思ってちゃんと勉強も改めてしましたし、青峰くんにもちゃんと勉強教えて学年で30位以内にもこう、ね!ね!その笑顔やめて怖い!
「じゃあ改めて、次のテスト、大輝と敦、あと涼太の勉強を見てやってくれないか。」
勝負だ、みたいなこと言われるかと思ったらそれは案外、バスケ部のキャプテンっぽいことを言われた。
次の中間テストで平均点以下の点数をとった者はもれなく放課後補習のプレゼントがつくらしい。
それは次の期末試験まで続くらしく、部活にとても大きな支障が出てしまう。
それを防ぐために私に彼らに勉強を教えてどうにか平均点以上の点数をとれるようにしろ、ということらしい。
ま、まさかそうくるとは…。
「もちろん、お前もバスケ部のマネージャーだ。
もし平均点以下の点数を取るようなら…おっと、そんなことは心配なかったね。
なんたってもうやったことのある単元なんだからね。」
フフフと笑う彼にもはや何も言えない。
親友との電話で四苦八苦している黄瀬、それを温かく見守る他の5人をちらりと見てから私は大きなためいきをついた。
これから少し、忙しくなりそうだ。
…というか、もう向こうに戻ることはないのだろうか?
…ううん、今はそんなことを考えるのをやめよう。
向こうとの連絡手段もこれで確立したわけだし、とりあえず今は…め、目の前の課題に集中しよう…。
…全部教え切れるかな…。