ブルーすかい。

□男前の名は伊達じゃない
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そして、ゆっくりと言葉を選びながら話し始めた。
私はもともとこの世界で育ったわけではなかったこと。
気がついたらこの世界のあのマンションの部屋で寝ていて、帝光中に通うことになったこと。
この容姿とは全く違う容姿で、別の人間として生きていたこと。
この世界のことはもともといた世界では漫画の中の世界だったこと。
そして本当は中学生ではないということ。
話終わったあとにには皆黙りこくっていた。
そ、そりゃそうだよ。
実はあなたたちは私の住んでいた世界では漫画の中のキャラクターでしたーとか、本当は20歳OLですてへぺろー☆とか、言われても信じられないだろう。
私が逆の立場だったらうっそだーそんなのー!で終わっていた。
だが目の前の少年たちは違った。
しっかりと、私の言葉を真摯に受け止めてくれていた。
…私の周りの子ってすごくいい子ばっかりよね、麻美含めて。
でも半ば信じられないらしく、むっくんなんかはもうほら、お菓子ボリボリ食べ始めちゃったし…。





「証拠は?」





凛、と部屋の中に響き渡った声。
まぁ、それは赤司様の声でして。





「奈々の言っていたことを信じていないわけではない。
でも証拠なしにはいそうですか、というほど僕の頭は都合よくできていないんだ。
何かその話の証拠になるものはないのか?」




まぁ赤司様の言うこともごもっともでございます。
私はしばらく考えたあと、そういえば証拠にしようと思った携帯電話を取り出した。
この中に彼らを納得させることのできるデータが入っている。
というかまずこの携帯電話の形からしてみんな驚いていたんだけど。
麻美と話してた時も考えてたけど、この世界ではまだスマートフォンというものが出ていないらしい。
まず私がこの世界にこの携帯を持ってくることができているのが不思議だけれども、今となってはそれは関係のない話だ。
私が携帯の画像フォルダなる秘密フォルダ。
そう、黒バスの画像が入っているフォルダを開き、さつきにスマホを渡した。




「え…こ、これ私、とテツくん!?」




まず最初の画像は、さつきと黒子くんが腕を組んで歩いているシーンの画像。
それを見たさつきはみるみる顔を赤く染めるが画像を凝視していた。
みんなもさつきの後ろから覗き込んで見ている。





「絵…、か。
 絵にしてはすごく良くできた絵なのだよ。」




「ほ、他の画像はないんスか!」




さつきはもうすでにさきほどの画像でお腹いっぱいらしく顔をだらしなくしながら次の画像へとと進む。
次に出てきたのはキセキの世代の皆の画像。
これには驚いたらしくみんな「おー。」だの「わぁ、いいですねこれ。」などと口ぐちに言葉に出す。
そうしてみんなでワイワイと私の携帯を眺めている姿を見ていると沢山の妹、弟が出来たみたいでなんだかほほえましい。

すると、皆のその輪の中からするりと抜けて赤司くんが私の座っているベッドの隣に座った。




「しかし、まぁ確かにこんなもの見せられたら信じるしかないね。」




「あはは…今まで黙っていてごめんなさい。」




苦笑いをする彼にこちらも苦笑いをして返す。
どちらにしろ、この中でいちばん大人なのは彼だ。
そして誰よりも周りのことを見ていて、正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると言ってくれる。
ふぅー、と溜息をついた彼は私の頭をわしゃ、と撫で始めた。
いきなりのことでびっくりした私は思わず肩をびくつかせてしまうが、彼は別にこちらを見ることもなく、そのまま私の頭を撫で続ける。
その行為になぜか安心し、先ほど我慢していた涙がひとつ、ふたつと流れ始め、ぽろぽろと、気が付いたら私は声をあげて泣いていた。
その声にみんなぎょっとして楽しげに見ていた携帯から私へと視線を向ける。
傍から見たらある意味赤司が泣かせたように見える。
その姿を見て青峰くんがわずかに口元をひくつかせた。





「おい、赤司、お前何してんだァ…?」




明らかに怒気のこもった声、明らかに怒っているこいつ、まじで怒ってる。




「何って、ほら、奈々が先ほどから涙をこらえているのがわからなかったのか?」




涼しげな赤司くんの顔。
やー、これ、おいおい、まって、ちょっとまって、喧嘩はじめないで!私の為に争うのはやめて!とかいわないとかいけないのかな…!
そんな二人を見てほかのみんなはとめる気配もなく、むしろ「やれやれ」みたいな感じで見守られてる。ちょっとまって!?みんなとめて!?
その瞬間、さつきが「んっ!?」という声をあげた。
というか彼女自体、スマホが珍しかったらしく、私の周りで繰り広げられている修羅場には目もくれずずっといじっていたらしい。
パッとそちらに顔を向けると、さつきは何だかびっくりしたような顔をしてスマホをじっと見ていた。




「な…奈々…こ、これ…。」




そんなさつきの反応に青峰くんと赤司くんは一旦言い争いをやめた。
…というか言い争いっていうかあの、あれですけれどね。
赤司くんは別に青峰くん全く相手にしていませんでしたけれどもね!





「これって…!」




さつきが少々青ざめた顔というか高揚した顔というか微妙な顔をしてこちらを見て、そしてある画像を映し出した携帯を此方に向けた。





「…だーれー?この男前な人〜、奈々ちんの彼氏〜?」




そこに映っていたのは黒髪ショートの切れ長で青い瞳の人物が映っているプリクラだった。
隣には栗色の髪の毛の女の子が映っていた。
確かにプリクラ補正がかかった…と考えれば私に見えなくもないこの女の子。




「か、彼氏がいたんスか奈々ちゃん!」




「奈々!!!私聞いてないから!!!」




どうやら彼らは大きな間違いをしているらしい。
容姿を聞いて思いだした人もいるだろう。




「あの…大変申し上げにくいのですが…。」




おずおずと蚊の鳴くような声を絞りだす。
彼らはそんな私を凝視している。
答えによってはどうなるかわからないぞという笑顔という圧力もあり正直内心ビビってる、このあとこの真実を伝えたらなんだか私違う意味でどうなるかわからない。
ちらり、ともう一度さつきがこちらに突き付けている画像を見る。
どうみてもこれは、だな。





「それ…私なんだけど…。」





ここで今日一番のどよめきがあったことは言うまでもない。
…あ、そういえばこっちに戻る前に麻美に連絡するの忘れた。
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