ブルーすかい。

□世界は変わる
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To.奈々
Sub.無題

_____________

なぜ姿をいきなり消した。
というかお前は怪我人だろう
。お前をあの後病院へすぐ運
んで、とりあえず俺たちは部
活へ戻ったのだよ。

だがどうだ。
部活が終わってお前のいる病
室に足を運んでみればお前の
姿がこつぜんと消えていた。
この時の俺たちの気持ちがわ
かるか。

桃井のやつはすぐさま学校に
戻って先生にお前の連絡先を
問いただし、メールアドレス
を聞き出し、俺たちにこうし
てしらせてくれた。
が、青峰と黄瀬は取り乱して
な…。
気がついたときには病室には
やつらの姿はきえてしまった
のだよ。
きっとお前を探しにいったの
だろう。

見ているなら返事をくれ。
そして近くにさっきお前を襲
った男がいる場合は即座に逃
げろ。
そいつは灰崎という名前でう
ちの元バスケ部のレギュラー
だ。
まったく面倒くさいやつに絡
んでくれたのだよ。
奴は赤司が危険人物と認識し
て退部させた奴だ。
このことはお前にも一応話し
ておくべきだった。

頼むから無事でいてくれ。






という長々という文章がつづられていたのだが…。
でも助かったありがとう緑間くん。
そんで私が黒バスの世界にいたことも夢じゃないことがわかった。
現に携帯にこうして連絡が来ていて信じるなというほうがおかしいと思う。
だが、どうやって戻る?
今私がいるのはもともと私がいた世界だ。
この世界には帝光中なんてないし、そもそもキセキの世代と呼ばれるスーパー中学生はいない。
まったくの別世界。
共通している事柄は何か。
その前に私は何か重要なことを見落としている気がする…っ!
そこで気がついたのだ。さっき母が言ったことを。
私がむこうの世界で過ごした時間は4日だ。
つまり向こうに飛んでいた時間とぴったり一緒である。
そうとなれば、急いでさつきにメールを作成して自身の電話番号を添付したものを送信しようとする。
が・・・。





「送信・・・エラー!?」





送れないのだ。
向こうから送ることができてもこちらからは送ることができないのか…?
もしくは送る、受け取ることができる時間が決まっていてもうそのタイムリミットが過ぎている、とか。
だがその疑惑は断たれた。
ぴろんと再び自分の携帯が鳴る。
急いで確認するとさつきからのメールだった。





『本当にどこにいっちゃったの…っ!』





もしかしたら私は彼女を泣かしてしまっているかもしれない。
ギッと奥歯を噛む。
この自分から連絡できないというむずがゆさにどうにかなってしまいそうだった。
向こうにいってはじめて仲良くなった女の子。
相思相愛とまで言ってくれたあの優しい女の子を慰めることも許されないなんて。
悔しくて涙が出てきた。
だがそれすらもグッと飲み込む。
私が泣いてどうする、彼女のほうがつらいんだ。
帝光中バスケ部のみんなには悪いことをした。
だけど私は無力だ。
今この現状から抜け出してみんなの元へ駆けつける術がわからないのだから。
悔しくて…気がおかしくなりそうだ…!


私がベッドでうずくまっているとガラリと病室の扉が開いた。
そこで想像もしていなかった人物がそこに現れることになる。





「やっほーわが親友よ!大丈夫かー!黄瀬くんが今日もかわいくて私はつらいよー!」





それは私が昔部長を務めていたバスケ部のマネージャー。





「あ、麻美…!」





親友の水崎麻美だった。

その瞬間泣くまいとしていた私の涙腺は限界を迎えた。
麻美の口から出てきた人物の名前を聞いたからもあるが、やはり彼女の声を聞いて安心したのだ。





「お、おうおう、どうしたどうしたー。
そんなに私に会いたかったかー!」





麻美はそんな私を見ても取り乱すことなく、近くによってきてくれて私を抱きしめてくれた。
そして優しく頭をなでてくれる。
そういえば麻美は私の頭なでてくれるなぁ…なんて思いながら私はおとなしく頭をなでられていた。

そして少し落ち着いた頃、私は親友に話してみることにした。
彼女であれば信じてくれるに違いない、そう思ったのだ。




「ねぇ、麻美。」




「おうおう、なんだなんだ!」




「今からちょっと長い話するけど、笑わないで聞いてくれ。」




「あたぼーよ!何年お前の親友やってると思ってんだー!
それくらいお安い御用だ!」





ドンッと胸をこぶしでたたく麻美はなんとも頼もしい。
見た目は普通のかわいらしい女の子なのに、私たちのように男勝りの女たちの中にいたから多少言動が男っぽくなってしまったのだが。

そして私は深呼吸をして気持ちを切り替えてから麻美に改めて向き直る。
彼女もベッドの近くにあったいすに座って、ちゃんと聞く体制をとってくれた。
そんな麻美を見てから私はゆっくりと、口を開き、夢のような4日間の素敵な体験を話した。
そしてその後のメールの話も。
途中何度か涙が出てきてつっかえたけど、それでも彼女は私をあやしながら最後までしっかりと聞いてくれた。
やっぱり、彼女は素敵な女性だ。






「ふむ…大体話はわかった。」





そして話が終わった頃にはもうすでに正午になっていた。
起きたのが九時ごろ、んで多分20分くらいぼーっとして、そっから麻美がお見舞いに来て、そこからちょっと泣いてたから…実に2時間半くらいは話し続けていたことになる。
よくもまぁ、こんなに長い昔話に付き合ってくれた。
ふぅー、と目の前の親友が長いため息をついてから天井を仰ぎ見る。






「まぁ、一つ私がいいたいのはさー。」






そこで視線を私に戻す。
その目があまりにも真剣だったため私は思わず身構える。
もしかしたら、笑われるのかなー・・・とかおもっちゃったり…。
だがそんなことはまったくなくてむしろこっちが笑いたくなるようなことを彼女はのたまった。





「黄瀬くんに告られるとか!!!!ずるい!!!!
というか私を差し置いてなにやってんだお前は!!!






「あっはは…ごめんごめん。」





ぐいぐいと顔を近づけてプンッと可愛らしく怒る彼女を両手でどうどうと押さえる。
まぁ私だってそんな展開予想もしてなかったですよっと…。
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