ブルーすかい。

□世界は変わる
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気がつくとそこは天井が真っ白な部屋で。
鼻につく薬品のにおいからどうやら病院らしいことがわかった。
何だかすごく長い夢を見ていたような、そんな気がした。





「奈々!」




「先生!奈々が目を覚ましました!」





そして突然聞こえてくる声。
それはどっからどう聞いても自分の両親の声だった。
二人は私が目覚めたのを確認してからバタバタと先生を呼びに出て行ってしまった。
あれ?お母さんとお父さんって今海外で仕事してるんじゃなかったっけ?
確か私、あのいかつい人に首しめられて…
それで最後に…。
そこまで思い出して顔を青ざめさせてからバッと起き上がる。
そしてそこで体に妙な違和感を覚えた。





「…っ!?」





懐かしい感覚、そう、それはどこからどう見ても20歳の時の自分の体だった。
隣にあった掛け鏡の中にうつる自分は黒髪の短髪で、切れ長の目、少し青みがかった瞳、どこからどう見てもふわふわとした栗毛ではなかったし、あの丸いきらきらとした茶色の瞳ではなかった。
…あぁ、そうか、あの世界は夢だったのか…。
その鏡を見てからくしゃりと髪の毛をつかむ。
あはは、夢にしちゃ妙にリアルだったな…というか首しめられて病院つれてこられたんならわかるけど、20歳の私の体までなんで病院にいるんだ…?
とその瞬間に先生を連れた両親が私の元へと帰ってきた。
そしてお母さんが改めて私の姿を見て、目元に涙をいっぱいため込んでこちらに走ってきて私を強く抱きしめた。





「奈々…っ奈々っ…!本当によかった…っ!このまま目が覚めないんじゃないかって…心配してたのよ…っ!」





ぼろぼろと涙をこぼすお母さんを見てだいぶ心配をかけたのだろうな、と悟った。
お父さんも先生と話してはいるもの、ちらちらとこちらを見ている。
この両親はいつまでたってもしかたないなぁ、とため息をついて、先生と話し終わったのを見計らってお父さんを呼ぶために手招きをする。




「奈々…っ!!!」





うちの両親はなんていうか、こう。わんこみたいな感じ。
呼ぶとくる、そんで抱きついてくる。そして抱きしめ返すと喜ぶ、みたいな。今にもしっぽみえそうな感じ。
娘の私が言うのもなんだがめちゃくちゃ可愛い。
二人をまとめてぎゅーぎゅーと抱きしめる。
そして少し両親を落ち着かせてから、私はなぜ病院にいるのかの事情を聞いた。






「事故?」





「うん、そうなのよ〜、朝なんかいつもより寝ぼけてるなぁって心配だったんだけど、案の定玄関前で車と接触事故しちゃったみたいで…でもあんまり向こうもスピード出てなかったみたいだから奈々が目の前にいるってすぐにわかったみたいでブレーキかけてくれて…だからあんまり大事にはいたらなかったのよ〜。」





ふむ、どうやら私は車に引かれたようだ。だけどそのような記憶はまったくない、お恥ずかしいことながら私は自分が昨晩布団に入ったことしか覚えていない。
結構強く頭を打ったらしいので事故前後の記憶が飛んでいてもおかしくないとのこと、というかそんな楽観的でいいのか…。
まぁ倒れて4日経っていたらしく結構長い間眠っていたようだ。
だがこの人たちの心配性と過保護は重症にもほどがある。
でも心配かけたのは本当なのでとりあえず「ごめんなさい」と謝った。
そしてそこで思い出したらしいお母さんが、鞄から私の携帯を取り出した。





「そういえば奈々が目を覚ましてからいきなり携帯鳴り出したのよ〜、しかも連続で8件くらい。でも中は見てないからあんしんしてね!」





語尾にハートマークをつけるような勢いでお母さんがウインクをする。
今思ったけどこのかわいい容姿の母とかわいい容姿の父からどうしたらこんな男前の女が生まれるんだろう…私もあの帝光中に通ってた私みたいなふわふわかわいい女の子になりたかったなー、なんて思ったり。
まぁ別にこの顔嫌なわけじゃないんだけど…。
お母さんに言われたとおり携帯を開くと8件のメールが届いていた。
受信ボックスを開いてみるとそれはすべて知らないメールアドレスで、何件か同じメアドの人からメールが届いていた。
おそるおそる開くと驚愕する。








To.奈々
Sub.ちょっと!

_____________

病院から抜け出して一体どこ
にいったの!?
あとメアド先生の名簿から勝
手に盗んで送ってみちゃった

じゃなくてほら!このメール
見たらさっさと電話番号教え
る!

          さつき






紛れもないのかどうかわからないが、私には偶然だとは思わなかった。
というかこの内容からしてこの「さつき」は私の知るあの「さつき」以外にいないだろう。
急いでほかのメールを見ると黄瀬くん、青峰くん、黒子くん、赤司くん、紫原くん、緑間くんからも届いていた。ちなみ
にあとの2件はさつきからだ。
…というか名簿盗むなよさつき…というかそういうときのさつきの行動力って侮れない…恐怖さえ覚える。
そして次のメールを開く、妙に長いメアドだなおい…。






To.奈々
Sub.どこっスか!

_____________






あぁ、黄瀬か。妙に納得してしまった、あれだろ、メアドばれないように長くするんだろ!業界の人って!
…あ、あれ?そういうわけじゃないのかな…。
というか黄瀬くん急ぎすぎて件名に内容書いちゃったよ…。
案外黄瀬くんって心配性なのかなぁ。
次に進む。





To.奈々
Sub.無題

_____________

どこいったんだよ。





いやー、そっけない、けどなんか青峰くんっぽいなぁ…。
というかメアドにバスケットボールって入ってる、えっ、しかもばかって入ってる…。これもし青峰くんだったら彼が考えたんじゃなくてさつきが考えたんじゃ…。
次に進む。けど件名でなんとなく察したけど…黒子くんかな。






To.奈々
Sub.すみません

_____________

黄瀬くんと青峰くんと赤司く
んが怖いので早く帰ってきて
くださいませんか。
僕たちこんなんじゃころさ






彼に何があったぁあああああああ!?!?!?
なぜ途中で終わっている!?こわい、こわいって!!!

なぜか赤司くんが黒子くんの携帯を覗き見て笑顔で携帯ぶんどってそのまま送信したあとに黒子くんが…っ!っていう図が浮かぶんだけどどうして!?
震える手元で次のメールを読む。






To.奈々
Sub.無題

_____________

早く帰っておいで。






あああああああ赤司様だぁあああああああああああ!?
こ、こわ!!!なんか怖い!さっきのメール見た後だと怖い!?
いや彼ヤンデレ要素満載だと思うけど、いや、なんかあれだよね、彼の元へ帰った瞬間「もうどこにも行けないようにきれいな姿のまま一生かわいがってあげるよ。」とか言われたらど
うしよう!?
完全なる死亡フラグ!?
がたがたと今度は体まで震わせた。次に進む。





To.奈々
Sub.無題

_____________

奈々ちん、どこいっ
ちゃったの?怖がってないで
帰っておいで〜。みんな心配
してるしー。はやく一緒にお
菓子食べよ〜。





この中だと彼が一番まともな気がしてきた。
いや違う、さっきの二件がインパクトありすぎて忘れてたけど、さっきの二件以外比較的まともだ。
というかむっくんかわいいな、というか私彼のこと紫原くんって呼んでたんだっけ…。今度むっくんって呼んでみよう。
次に進む。
次のメールを見た瞬間、私が倒れてからどうなったのか、そして向こうで今なにが起こっているのかが少しながら把握できた。
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