ブルーすかい。

□帝王との勝負の行方
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気がつけば朝のSHRの5分前だった。
あとは更衣室に私とさっちゃんの二人だけだったので、急いで鍵を閉めてから走って教室へ向かった。
それがなんだかおかしくて、二人で笑った。
そして走りながらさつきはくるりと私の方を向く。




「というか奈々ちゃんってそろそろよそよそしいから奈々って呼んでもいい!?」



…!




「もちろん!喜んで!というか私もそろそろさつきって呼びたいなぁって思ってたところ!」




「やっだ!私たちって相思相愛じゃない!?」




「あっはは!そうかもねー!」




走りながら話しているので必然的に大声になる。
周りにいた生徒に不思議そうな顔で見られるも、私たちはお構いなしに笑い続けた。
もう少しで教室へと到着する。
私のクラスの方が手前になるので私はスピードを緩めてさつきを見送ろうと横を見る。




「奈々!」




「なぁにさつき!」



そこでさつきが走り抜けながら私に再び話しかけてきた。
すでに私は止まっているので距離は広がるばかり。
大声で話さなければいけないのでボリュームはかなり大きめだと思う。
たぶん教室内にも聞こえてる。
そこでさつきちゃんがやらかしてくれたのだよ!
私の隣の席が青峰くんと知りながら!私たちの席が廊下側だと知りながら!彼女は!



「これからもよろしくね!あとうちの幼なじみのこともよろしく!」




「ちょっとさつき!?」




こんな暴挙をやって遂げたのだよ!
さつきの声なんて幼なじみの彼ならばすぐにわかるはず。
その声の主の幼なじみが自分だということもわかるだろう。
チラリ、と彼の席を見ると…。






「…スー…。」





寝ていた、ばっちり寝ていた。
どうやらこれは聞かれていないらしい。
でも彼に聞かれていなくても関係ないのだ。
そう、クラス中のみんなから注目を浴びていることに今気がつく。





「えっと、今の桃井さんだよね…。」




「桃井さん今『幼なじみのことよろしく』とかいってたよね…。」




「…桃井さんの幼なじみって青峰くんだよね…。」




シンッ。

先ほどまでガヤガヤとしていた教室が静まりかえる。
お、おいおいこんな展開冗談だろ…!?
いやいや、あのまて、早まるな、『よろしく』って言葉で早まるな!
そして一気にざわつく教室内。




「よろしくってことはつきあってるってことなのかな…?」




「うっそマジで!?やばくない!?あの青峰だよ!?奈々ちゃん絶対だまされてるって!」



いやいやいやいやいや!
違うってまじ!つきあってないから!?
あたふたと助けを求めようと隣を見るも彼はこんな今もぐっすりとお休みしてらっしゃる。
涙目で一昨日話しかけてきてくれた子に視線を向けると、彼女たちは優しかった。




「奈々ちゃん、さっきの桃井さんのいってた『よろしく』って、奈々ちゃんがバスケ部のマネージャーで、青峰くんの世話をするって意味での『よろしく』ってことでしょう?」




その言葉を聞いて回りのざわめきが消えた。
そ、そういうとらえ方をしてくれる方がいるなんて!
いや実際は前者の方が意味合い的には近いんだけど、でも今はその方が助かる。
私は感激のあまりガシッと助け船を出してくれた彼女の手を取り、コクコクとうなずいた。





「ほら、奈々ちゃんもこう言ってるんだし、変な詮索やめなよあんたら。」




どうやら彼女はこのクラスのボス的存在らしい。
というか確か学級委員長様だ。
女子サッカー部のキャプテンで今年注目のエースだとか。
そんな彼女が私のほうに再度クルリと振り向き「もう大丈夫だよ。」と頭をなでてくれるもんだからもう私の涙腺ぼろぼろ。
こんなにいい子がいるなんて…!ほんとやさしい…!というか今なら女の子に惚れる理由わかる気がする…!と彼女に泣きついた。
…私って普段こんなイケメンな感じのことしてたっけかな…?
うん、過去に私と関わって嫌な思いした女の子達、本当にごめんなさい、と心の中で思わず謝った瞬間であった。
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