ブルーすかい。

□青い青春
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一夜明けてまた朝がやってくる。
ぐっと背伸びをすると一晩寝たことで昨日の疲れが全て取れていることに少し驚きを隠せない。

あぁ、中学生って確かこんな感じだった。
大人になるって恐いわー…、とどこか人ごとのように。

昨日、黄瀬と別れてから家でピラフを作り、それを食べてからお風呂に入ってすぐに寝た。
疲れていたのだろう、すぐに眠ることができた。
…と、そこで思い出してしまったのだ、昨日黄瀬に言われたことを。






『好きっス奈々ちゃん。』





「っああああああああ!」





朝から変なことを思い出し、ボッと顔を真っ赤に染める。
しかも家が隣だったという事実。
まずい、これはまずいことになりましたぞ母上!
私!イケメンデルモに告白されて!しかも家隣!アッ!

自分を落ち着けるために深呼吸をする。
吸って、吐いて。

そうすれば幾分かは楽になる。昔試合の前も確かこうしてリラックスしていた気がした。
そして、ちゃっちゃと朝ご飯を作り、昨日炊いておいたご飯をよそい、もぐもぐと白米とお味噌汁をいただく。
昔一人暮らしをしてて、しかもちゃんと料理作ることができるようになっててまじめによかった。
もし料理できなかったらこんな状況に陥ったらパニックだったろう。
最後の一口を口のなかに突っ込み、手を合わせてごちそうさま。
こういう礼儀作法は大事だと思うからちゃんとやるぜ!

ハンガーに掛けてタンスに掛けておいた制服に袖を通し身支度を済ませる。
というか昨日マネージャーの仕事をして思ったのだが、この長い髪の毛はどうにも邪魔だ。
かといって切ってしまうのももったいない気がする。
ということで、解決策が見つからないため、髪の毛を一つにし、トップに持っていてかなりアップのポニーテールにする。
それでもふわふわとしたくせっ毛は一つにはまとまってくれず、あっちを向いたりこっちを向いたりしている訳だが。
まぁ、だいぶ楽になったし、いいだろうということでポニーテールで今日一日を過ごしてみることにした。
…この身長でツインテールなんてしたら合法ロリだ。うん。
この世界にロリコンという人たちがいるのかどうかは定かでは無いけれど、なんだか自分が恥ずかしいのでそれだけは頭の中から除外した。
鏡の前でそんなポニーテールをした自分とにらめっこしていると、ピンポーンとインターホンがなる。
大家さんかな?と返事をしてから入り口へと向かう。
一応女の子だし、チェーンを掛けておいた方がいいわよ、という昨日の大家さんのご助言を受けて、一応チェーンをしたままドアを開ける。
すると、そこに居たのは水色の半袖ワイシャツに黒いネクタイをした金髪少年、黄瀬涼太だった。





「おはよっス奈々ちゃん!一緒に学校いk…なっ!?な、なんスかその髪型!!!!!かわいい!!!!かわいいからあの!!!!抱きしめさせて欲しいっス!さぁ!チェーン外してドアを開けて!俺の胸の中に飛び込んでくるっ」





――パタン。


私は何も見なかったことにして静かにドアを閉めた。
するとドンドンとドアを叩く音。
だが、声は何も聞こえない。防音になってるのかなこの家。
新しい発見をした、これならストレスを発散するために大声で歌っても近所迷惑にはならなさそうだ。
こんな発見をさせてくれた黄瀬くんに感謝をしよう。

さすがにうるさいので鞄を持ち、しぶしぶチェーンを外してドアを開けるとそこにはしょぼくれたわんこが…あ、間違えた、黄瀬くんがいた。
私の姿を見つけると、主人を見つけたようなわんこのような目をしてガバッと抱きついてくる。





「あああああやっぱりかわいいっス!!!!殺人的っスよそれ!!!!今日はやっぱり学校行くのやめよう?そんで俺の部屋で一日一緒に居よ





「学校行かなきゃ朝練遅刻しちゃうね−、ほらー、いこいこー。」




…了解したっス…。」





ぐずる黄瀬くんを引っ張りエレベーターへと向かう。
てか一日黄瀬くんの部屋にいるってなにそれ、襲われるパターンじゃないですか確実に。
い、いや、そりゃあの、経験無いからなにもわからないですけどね!?
言ったじゃん!?男に告白されたことないって!?
つまり彼氏できたことないってことだからね!?
くっと涙をこらえていると黄瀬くんにはその顔が見えなかったらしくエレベーターではずっとひっついてきた、暑苦しい奴め。

まぁ、昨日とさほど変わりなく一緒に話しながら歩いていたが、昨日と変わった点が一つある。
そう、なんて言うかその。




「奈々ちゃんかわいいっス!」




「そういう奈々ちゃんも俺は好きっスよ!」




「奈々ちゃんの料理毎朝食べたいっスー…。」




こうなんて言うんだろう、スキンシップが激しい?
いや、めちゃくちゃアピールしてきてるんだよこの子、かわいいんだけどさ、私から見たら。なんかなつかれてる感じしていいんだけどさ!?
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるため、いちいち顔を真っ赤に染めてしまう。
その反応を見て彼はおもしろがっているのだろうか?
確かに諦めないからとか言ってた気がするけど、朝からこれか…というかこれがずっと続くのだろうか…。
夢小説とかでよくあったけど、黄瀬氏、まじでこういう子だったのね…。

さて、なんやかんやで朝早くに学校に到着。
彼は着替えてくるらしく、更衣室へと姿を消した。
私もジャージに着替えなきゃな、と思い女子更衣室へ向かおうとするとさっちゃんに会った。
そんなさっちゃんは私を見るなりいきなり抱きついてきた。
…今日会った瞬間抱きつかれる日なのかなぁ?




「奈々ちゃんがポニテしてるっ!!!かわいい!!!」




「ありがとさっちゃん…というかその、髪型一つでそんなに雰囲気変わるものなの…?」




さっちゃんなんて抱きつくじゃ物足りなかったらしくて、ほおずりまでし始めたよ。…でもかわいいから許す。
そんなさっちゃんと二人で女子更衣室へと向かう。
他のマネージャーさんも来ていたらしく、やっぱり髪型を変えたこともあってかみんななんだか小学生を相手にしたような反応してきた。「かわいい」とか「お菓子食べる?」とか、というか私そんなに幼いのか。
ジャージが必要ということで家にあった真っ黒なジャージを一着持ってきてそれを着て体育館へと向かった。
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