ブルーすかい。

□黄色と青と赤色と
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何のご用?ときこうとしたけれども、目の前の相手はゼーハーと息を荒げていた。
さすがにバスケ部レギュラーしかも期待のエースとはいっても、構内一週全力疾走の旅(おまけ付き)をしたら疲れてしまうのか。





「え、えっとお疲れ…。」




余りにも申し訳なくて他にかける言葉も無い。
苦笑いしながら私の鞄の中にあったペットボトルの水を手渡すとそれをグイッと一気に飲み干してしまった。おぉすげぇ。
水を飲んで少し落ち着いたのか、ふぅーっと息を吐き出すと空になったペットボトルをトンと置き、その場に寝転がった。

ここは少女漫画を読む乙女達が心ときめくあの場所。
そう、屋上である。
ここで告白されたり、お弁当食べたり、授業サボったり…というのが青春時代と思って勘違いしてるそこのガール!!!
違うぞ!中学入学しても高校入学しても屋上でハッピーパラダイス学生生活をエンジョイしようとしても無理だぞ!
今ここにいるのは、青峰が何故かしら屋上の鍵を持っていたからで…というかなんで本当に持ってるんだろうね?





「ふぅー…何はともあれ、捕まんなくてよかったな−。」




「う、うん。」




そんな寝転がった青峰の近くに立っていた私はふ、と空を仰ぎ見る。
屋上から見る空ってこんなに綺麗なんだ…。というか回りに障害物が何もないせいか、いつもより空が広く感じる。

ほけーっと空を見ていると下から何やら視線を感じ、足元にいるであろう青峰を見た。
ぽかーんと口を開いていたと思ったら急にニヤニヤし始めてなんなんだこいつは、と油断していた私も悪かったのだ。




「水玉のパンツね…いい趣味してんじゃん、嫌いじゃないぜ?」



「なっ!?!?!?!??!?」



バッとスカートを抑えてかかと落としを試みればゴロゴロところがってあっさりとよけられてしまう。
チッ、一瞬湧いた殺意を舌打ちに乗せて逃がす。
そんな私を見た青峰はやれやれとでも言うようにため息をつく。




「今朝といい今といい…お前怖い…。」




「君に言われたくないからね!?!?!?」




まったく、という意味を込めてため息をつくとよいしょとその場に座る。
うん、女の子座りという奴をしてるんだよ、体育座りなんて「パンツ見てください」って言ってるようなもんじゃん。
ていうか始業式とか集会の時の壇上に上がってる人ウハウハだよね、パンツ見たいほうだいじゃん。
そんな煩悩を追い払うためにぶんぶんと頭を振れば、青峰がもう一度ゴロゴロと転がってきて私の隣に戻ってくる。
…てかちゃんと立ち上がって戻ってこいよ…転がって戻ってくんなよ…。

そういえば思い出した。
青峰に確か用があると呼び出されたんだった。
結局それってなんだったの、と聞くと「あぁ」と彼は至極複雑そうに答えた。




「バスケ、好きか?」



いきなり問われたセリフに私は首をかしげる。
なぜそんなことを聞くのか、と。
「いいから」と答えを急かされ私はゆっくりと頷く。
そんな私を見てフッとやわらかい笑みを浮かべる青峰にちょっとだけ見とれたのは秘密だ。



「あー、っとなぁ…まぁ簡単に言っちまえばマネージャーが足りなくて困ってんだ。
 指導が厳しいとかで根性ないやつがすぐばったばったやめてっちまってよ。
 まぁ、そんなやつからは世話されたくねぇし部活にも必要ねぇからいいやー、って思ってたらいつの間にかマネージャー一桁になっちまってなー…。」



どこか遠い目をしてポツリポツリと語りはじめる青峰くん。
いやぁ、そのやめさせるときってなんかヒステリックな感じになるのかなぁ、と想像して口元をヒクつかせた。




「しかも、黄瀬とか赤司目当てで入ってくるやつとかいてなー…。
 バスケのバの字もわからねぇやつに世話されてもなんにも嬉しくねぇっつーかなんつーか。
 だからバスケが好きな奴にマネージャーやってもらえるとこっちも話しやすいし、そっちの方が嬉しいっつーか…。」




ガシガシと頭を掻く彼に「ハゲるよ」と言おうと思ったが心の内にしまっておくことにした。

まぁ、確かに彼の言い分もごもっともだ。
昔、バスケ部で部長をやっていた頃、女だったからそういうのはあまりなかったが中にはこう、百合百合したような子もいてバスケ部の女の子も女の子で男っぽいこ多かったから同性からもモテてたのね。
んであの子とかあの子目当てで入ってきたマネージャーとかもっとムカついたのは『バスケ部のマネージャーとか運動部のマネージャーってなんかカッコよくないですか?』って大真面目に私に言ってくる子がいて即刻クビにした。
えぇ、部長権限で。

そんな子達をよそに、3Pが綺麗に決まったら一緒に喜んでくれたり、相手の情報を入手してきてくれたり、速攻などの戦法を一緒に考えてくれたりしたマネージャがいてくれて本当に嬉しかったし、助かっていた。
まぁ、それが後の黄瀬厨の我が友人であるのだが。

思い出にふけりながらクスクスと笑っていると青峰は自分がバカにされたと思ったらしく眉を寄せて明らかに不機嫌そうな顔をこちらに向けた。
だが私はその場に立ち上がりスッと右手を青峰に差し出すと打って変わったように彼は不思議そうな顔を浮かべた。




「その話、乗った!」






(奈々、パンツ見えてる)

(あぎゃああああああああ!!!!!青峰くんのスケベ!!!!!)
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