ブルーすかい。

□どうやら違う世界らしい
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さて、一体これはどういうことなのだろうか。
気がつけば自分が全く知らない場所で寝ていた。
かなり高い天井、そしてかなり大きな部屋。
昨日は確か仕事から帰ってきてそのまま疲れて寝てしまったはずだ。

きょろきょろと見回せばどうやらここはマンションの一室らしい。
そしてここには私一人しかいないような、そんな感じの雰囲気が感じ取られた。
時刻は朝の6時、なんと健康的な時間に起きたのだろう。


松木奈々は20歳の単なる普通のOLである。
単なる、というと語弊があるかも知れない。
かなり少年漫画が好きな20歳OLである。
最近は黒子のバスケというバスケ漫画にお熱だ。


寝ていても仕方がないと思い、よいしょと立ち上がる奈々。
そんな簡単な一動作にとてつもない違和感を覚えた。


「・・・なんか、体の感覚がおかしいような・・・?」


つ、と後ろを見るとかなり大きな全身鏡があった。
どうやらここの住民はかなりのおしゃれさんらしい。
お借りしまーす・・・とか誰も居ないのにいいながらその鏡の前に立つ。


「・・・わーお。」


違和感を覚えたのは当たり前だった。
奈々の目に映る、奈々であろう女の姿は。
どっからどう見ても小学生にしか見えないような背格好と顔をしていたからだ。


「・・・。」


とりあえず、落ち着こうということですーはーと息を吸ったり吐いたりして深呼吸をした。
何度見てもその姿は変わらず、動物で言い表せばリスのようななんとも愛らしい姿の女の子が映っていた。
夢かと思い頬をつねったが、


「・・・いひゃひ・・・。」


ちゃんと痛みも感じるし、こんな意識がはっきりしている夢もないだろうと諦めた。
ふぅ、とため息をつけばまずこの体の存在を確かめるため、何か身を確認できるものはないかと探し始めた。
勝手に人の部屋をあさるのもどうかと思うが、この状況からいってこの部屋はどうやら奈々の部屋らしい。


「・・・生まれ変わりとか・・・、小説とか漫画だけの話だと思ってたわ・・・。」


近くの棚、タンスを見ても最近の女の子が持っているようなものしかおいていなかった。
だが収穫があったのだが、タンスの中に真っ白なブレザーが入っていた。
そう、とある漫画の中の中学校の制服のような。


「いやー、でも・・・まさかね、そんな都合よくなんてね・・・いかないよね・・・?」


内心どきどきしながらこの体の子の学生証なるものがないかとバッグ類の中をあさったりしていた時だった。


「・・・あった・・・!」


中学生にしては珍しい証明写真付きの学生証。
そっとそれを開くと、そこには『帝光中学校』という文字が。
私は思わずその場にへたり込んでしまった。
まさか、そんなまさかなことが現実に起こってしまっていいのだろうか!
というか私すごくラッキーなんじゃないの?ていうか本当にこれってあの帝光中学校??!
タンスをもう一度開け、そしてもう一度学生証を見る。
どうやって考えても、自分の目に映るのは漫画で見たとおりの制服と、校章だった。

そういえば、と思いつ、と名前を見るとそれは私の名前だった。
どうやら名前は変わっていないらしい。
だけど、この見た目はどうにかならないものか。
20歳OLの時の私の身長は163センチ、バスケットボールをしていた。
しかし今目の前の全身鏡に映る私はどっからどうみても身長が140センチくらいしかなかった。

学生証を見る限りどうやら二年生らしいし、このくらいの身長でもおかしくはないだろうけれど・・・。


「でも、いきなり身長縮むとやっぱりこう・・・感覚というか。」


屈伸をしたりのびをしたりして体の感覚をつかもうとする。
いきなり身長が縮むとこんな違和感があるのか、と大変びっくり。
そんな中『ピンポーン』とインターホンの音がなった。
誰だろう、と思うと同時に、もしそれが自分のことをしっていて特に親しい間柄だとしたら!
私相手のこと分からないよどうしよう・・・とあたふたしているころにもう一度インターホンがなり、外から「奈々ちゃーん?大丈夫−?」という声がした。
その声が20歳OLの時代にも聞いたことのある声だったのではっとした。
急いでドアを開くと、そこに立っていたのは20歳OLの時代に住んでいたアパートの大家さんだった。
…てかそろそろこの20歳OLって言うのだるくなってきたんだけど…。
まぁここまできたら最後までやり通そう。


「おはよう奈々ちゃん!今日から学校だけど、大丈夫かい?」


どうやら中学生の私を心配して起こしに来てくれたようだった。
そんな大家さんを見て少しほっとした私は笑顔を向け「大丈夫です」と言っておいた。
だが、どうやら20歳OL時代の私を知っているような口ぶりではなく、彼女の話から両親は外国へと働きに出ていることと、私は帝光中に途中編入をするということがわかった。
本当に身も心も心機一転で中学校に向かう、いろんな意味で。
いや、心は心機一転なわけではないか、黒子っちかわいいうへへとか思ってるもんね。
ということで、ついでに大家さんは朝食とお弁当まで作って持ってきてくれたらしく、「おいしくないかもだけど良かったら食べてね」という言葉と「何かあったらすぐにおばちゃん頼ってね」という優しい言葉をいただいて私は部屋に戻った。


「さて、と。」


ここからが問題だ。
転入生ということで、昔からの友達はどうやらいなさそうだが、ここの場所から帝光中までの道が分からない。
まぁ悩んでいても仕方ないということで、大家さんが持ってきてくれた肉じゃがとお味噌汁を平らげて真新しい制服に身を包んだ。
今思ったけど、そんなにテンション上がってても、キセキの世代とは違う学年かもしれないもんね・・・ふふふ、期待しててもし違ったらショックだから今のうちに期待を捨てておこう。
よっし、大家さんの飯がうまい。今日もご飯がうまい!


それにしても新生奈々さんは髪の毛がとても長い。
もう少しでおしりに届きそうな勢いだ。
くりくりとした栗毛はどうやら地毛らしく、直毛剛毛だった20歳OL時代の私からしてみればとてもうらやましい髪質であった。
こんなことも滅多にないからということで、髪の毛は下ろしていくことにした。
・・・帝光中って、別に髪の毛下ろしててもいいんだよね・・・?さっちゃん下ろしてたもんね・・・?
20歳OLの私が通っていた中学校はとても厳しいと有名で髪の毛は必ずお下げにしていかなければならなかった。
いつの時代の学校だよって?現代の学校なんだよ若者たちよ。
大家さんが作ってくれたお弁当箱を見るととてもかわいらしい袋に包まれていた。
そのお弁当を見つめ、ふふっと笑ってから鞄の中にそれをつっこんで、少し早いが散歩がてら学校に向かうことにした。
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