Zzz

□キセキの世代
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そして高尾くんがこの世界に戻ってきたころ、午後の練習がスタートした。
私は午前中と同じようにステージの上の定位置においてあるピアノの椅子に腰かける。
正直に言うと別にそこまでバスケに詳しいわけではない、ちょっとくらい専門用語はわかるよ。
だってよっしーに引っ付いてればいやでも覚える。

どうやら午後はレギュラーは個人練習、その他の皆様は5対5のミニゲームで対人戦練習をするようだ。
キュッキュッと体育館に響くスキール音、ボールがゴールネットをくぐる音。
これらの音が心地よく鼓膜を刺激する。
と、てんってんっとボールが軽くバウンドしながらこちらへと転がってくる。
拾った方がいいかな、と思いステージの上からピョンッと飛び降りる。
そして私の足元へとたどり着いたボールの拾うと目の前には緑髪の眼鏡をかけた稀代の新入生だった。


「すみません、拾っていただいて。」


どうやらちゃんと見た目通りきっちりした子らしい。さきほどの「なのだよ」という語尾で話しかけられたら私の顔面が崩壊することは必至だから助かったには助かったけど。

それにしても、と私は彼の顔をジッと見つめる。会ったときにも思ったが改めてこうしてみるとやっぱりかなりの美人顔である。
そこらの女の子よりきれいな顔してる、解せぬ。
私が見つめすぎたからか、目の前の緑の彼は「あの…。」と少々困ったような声を出す。
そういえば両親の髪の毛の色何色なんだろ、えっ、これ聞くべき?聞くべき?と再び自分の世界に入ったときだった。


「な〜にしてるのかな名前チャ〜ン???」


「った!!!」


ゴンッと頭にこぶしが降ってきた。いや言わずもがなそのこぶしの持ち主はわが幼馴染の宮地清志くんなんだけど。


「今俺ら何してる?」


「…れ、練習です宮地様。」


「うんうん、よくわかってるな、そんで?お前は今、誰の邪魔をしてたの?」


「た、大切なレギュラー様の邪魔をしておりました…。」


「よーくわかってんじゃねぇか、おい。」


「いだいいだいいだいやめてぎりぎりやるのやめていだい!!!!」


初めて私たちのやり取りを見るであろう緑くんは目の前でポカンとしていた。
いやそりゃね、よっしーは学校じゃ女の子に一切手を出さないらしいし。
とりあえず、頭をワシッとつかんでいた手を放してもらい、私が持っていたボールを取り上げられる。


「とりあえず、お前はその辺でみとけって、それかいつもみたいにボールに遊ばれてろ。」


クルクルと指の上で器用にボールを回すよっしーはそう言葉を残してどこかへいってしまった。
くっそう、毎度思うけどいつからあんなに口悪くなったんだっけ昔からだったあれこれ前も言った気が…。


「あ、ごめんね緑くん、足止めしちゃって。」


「別にかまわないのだよ。そして俺の名前は緑ではなく、緑間真太郎です。苗字先生。」

「ファ!!?え、あ、っと、み、緑間くんね、オッケーオッケー…。」


「では。」


眼鏡のブリッジを直しながら彼はクルリと体の向きを変え、そのままコートの中へと戻っていく。


(まさか名前を知られているとは…)


恐るべし眼鏡キャラ。
え?眼鏡関係ない?いやでも、眼鏡かけてる子って大体情報通だったりなんだったりするじゃない…っ!

ふぅ、とため息をついてからどうせ暇だし、と近くにあるボールカゴの中から一つだけボールを取り出す。
男子高校生用のボールなので小柄である私にとってはかなり大きいのではあるが、よっしーのご指導もあって指のうえでボールをくるくる回せるようにはなった。
そうしてしばらくボールを回して遊んでいたが、ふと、コートの方に目を向けた。
その時だった。


「ナイッシュー!真ちゃん!」


「当然なのだよ、今日もぬかりはない。」


「いってぇえええ!誰だこんなとこにたぬきの置物置いたやつ!」


「あ、宮地さんそれ真ちゃんのっす!」


「緑間テメェエエエ!」


可愛い生徒たちのやり取りはさておき、初めて、あの、キセキの世代と言われる人のシュートを見た。
確かよっしーから緑頭の彼、もとい緑間くんはスリーポイントシューターだと聞いている。
だが、彼の立っている位置はそのスリーポイントのラインの遥か後方。
センターラインと言われる場所にいた。


「うっ…そだ…。」


あんなの、見たことない。
というかキセキの世代って確か5人いるっていってないっけ。
あんなレベルの子達があと4人もいるの…?



「ゆとり世代怖…。」



「「「いやゆとり世代関係ねぇから。」」」

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