Zzz

□お昼ご飯その一
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「じゃあ午前の練習終わり。」


「「「「「「「「っざしたぁ!!!!」」」」」」」


中谷監督が最後の号令をかけて今から生徒たちはお昼休憩に入る。
そういえばそうだった、お弁当持ってくるの忘れた。


「苗字、久しぶりだな。」


「えぇ、先生ご無沙汰しております。」


最後にこの練習を見に来たのが去年の12月、まだよっしーがスタメンに選ばれていない時。
まぁそこから約半年間見に来てなかったわけだからそりゃ久しぶりって言ってもおかしくはないでしょ。
そして実はここは私の母校でもある。もちろん中谷監督に授業教えてもらったよ、英語。英語嫌いだったからすごく良くお世話になった、うん主に補修とかいうやつで。


「そういえばお昼持ってきたのか?」


「いやぁ、それが忘れちゃいまして〜。」


「だと思ったよ、ほれ、お前の分だ。」


「わーい!先生ありがとうございます〜!」


そう、とてもお世話になったから私たちとっても仲良しなんです。先生曰く「お前放っておいたら餓死しそう」らしいんだけど。
まぁ、娘のようには可愛がってもらってる。よ!うん!
その場で中谷先生と「お前がうちの教師になるとはなー。」「教師じゃなくて保健室のお姉さんです!」「…そうだな。」とかいう会話を繰り広げていると後ろから頭を叩かれる。


「名前、飯一緒に食おうぜ。」


「おー、いいぞー!先生にもらった豪華弁当見せびらかしながら食べてやるぜ!」


「は!?なんでお前だけもらってんだよ!」


「…お前らも相変わらずだな…。」


やれやれと、中谷先生は私たちがギャンギャンしている姿をみて苦笑いと一緒にため息をこぼす。
私とよっしーは5つ違うわけだけど、私が高校三年生の時に中学二年生のよっしーが「バスケの強い高校に行きたい」と言い出して、せっかくだしうちの高校にくれば?と軽い気持ちで言ったところから中谷先生と私たちは知り合った。
昔から秀徳高校はバスケ部が強いと有名で、監督である中谷先生も昔日本代表としてプレーしていたというからこれ以上素晴らしいことはない。
そんな私の言葉に当時今より幾分かピュアなよっしーは嬉しそうに頷き、夏休みに高校見学と称してうちのバスケ部の練習を何日か見学させてもらっていた。
当然、私もつきそうような形になって、監督である中谷先生にお話を聞いていくうちに仲良くなった、といったら語弊があるかもしれないが、先生に娘息子のように扱われるようになった。

とりあえず、昔話はこれくらいにして先生にもう一度お礼を告げてから私はよっしーの後ろについていく。
体育館の外のベンチが並んでいるところに部員たちはいた。
なぜかしら、よっしーが座った隣が空いていて、まぁ私はそこに座るべきなんだろうなとそこに腰を下ろす。
と、すかさず逆隣に昨晩の王子様がやってきた。
……王子様ってこうやって改めて言うとなんか寒いな…。


「で!名前さんと宮地さんってどういう関係なんですか!」


そしていきなりである。
結構君もグイグイ来る人だね、昨日の紳士どこいった!


「だからうるせぇぞ高尾。単なる幼馴染だよ、轢くぞ。」


「だからなんで俺すぐ宮地さんに轢かれるんスか!!!!!」


…彼笑い上戸なのかな…?
というか今までよっしーに「轢くぞ」だの「刺すぞ」だの言われて爆笑してる人って初めて見た気がするんだけど…。
ゲラゲラと笑い転げている高尾くん?をどこか物珍しそうな目で見る。と目があった。


「…?どうかしたんスか、名前さん。」


「い、いや、よっしーに悪態吐かれて爆笑してる子とか初めて見たから…。」


そこまで言うと、なぜか彼が下を向いてプルプルし始めた。
…え?まって、私何か気に障ることいった!?
オロオロとしてよっしーの方を見れば知らんぷりしてこいつ飯食ってやがるくそ、おばさんの弁当よこせ!!!!!!!
そんなよっしーに睨みをきかせていると、高尾くんの方から「ブフォッ」と吹き出す声が聞こえた。
びっくりして振り返るとそこにはどうにかして笑いをこらえようとしている彼の顔。


「えっ、ちょっ、まって名前さん…ックク……よ、よっしー、てそれ宮地さんのこと…??」


「えっと…そ、そうだけども…?」


だって昔からそう呼んでるし…。
そう私が答えると後ろから盛大なため息が聞こえた。なんだよお前さっき知らんぷりしてたくせになんなんだよ!
その時だ。


「も…無理…ッ…限界…ッ……ック…ふふ……ッギャハハハハハハハ!!!!!よっしーって!!!!!ちょ!!!!!宮地さんそれ!!!!!!そう呼ばれていっつも返事してるんスか!!!!!やべぇ、俺も今度よっしーって呼んでもいいっスか!!!!!」


高尾くんがさっきの比ではないほど爆笑してる、床転げまわってる。というか地面だよ…コンクリートだけど…痛くないのかな…?
というかこの子笑いすぎでしょ…多分将来死ぬとしたら死因は「笑いすぎ」だと思う…。お姉さん心配だよ…。
というか昨日のイメージ総崩れだよ、ちょっと、あの時のときめき返して…!
そんな私の気も知らず、彼は爆笑し続ける。これもいつもの風景なのか誰も何も言わずにわいわいとしながらごはんを食べている。食べ盛りだものね…。食べ盛りの君たちへ…食べ放題パラダイス…。元ネタわかるかな…。
その後、バキッとお箸の折れるような音がして爆笑が絶叫に変わったのはわかりきった話である…。高尾くんご愁傷様…。

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