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□宮地家の朝
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詳しい話は次の日ってことで結局昨日の夜は早々に帰されたんだけど…。
「いや、おまえいくら気になるからって…。」
現在の時刻、AM6:00。
「きちゃった♡」
「きちゃった♡じゃねぇよアホ!!!!!!!!!!今何時だと思ってんだよ轢くぞ!!!!!!!!!!!」
「いやこれでも結構我慢したほうなんだけど…。」
「なんなの!遠足行く前の小学生なのおまえは!」
いやだって気になったんだもん(二回目)
たぶんこれ声に出てたらよっしーに「だもんじゃねぇよ」って言われてスパーンととても良い音を立てて殴られそうである。言わない、絶対に言わない。
目の前にいるよっしーは、灰色のスウェット姿。まぁ、今どきの若者って感じよね。え?別にそうでもない?
よっしーはがっしがっしと頭をかきながらまだ寝癖のついた髪の毛を軽く整える。なんだよ女子かよおまえ。
そしてクルリと私に背を向けてリビングへと向かう。
「とりあえずあがれよ…ったく、今日部活なかったら俺寝て……あ。」
そこでよっしーは気が付いたらしい。私の望みが。
もう一度私に向き直った時の顔はそれはそれは不機嫌そうなお顔で。
い、いやだなぁ、そんな顔してると女の子逃げちゃうぞ☆なんて言おうもんなら殴られるどころじゃなくなりそうなのでそっと胸の奥にしまっておく。
「まさかお前…。」
「ピンポンピンポーン!だって部活って8時からでしょ?ついてこっかなって!」
「……はぁー………だと思ったわ。」
瞬間盛大なため息を頂戴する。
いやだって、下心あるなしにかかわらずとりあえず彼に傘とタオル返さないとじゃない?
「いやでも、お前別に学校行けば会えるじゃん…。」
「この私にあと2日も待てというの!?無理無理!そんなのよっしーが一番わかってるじゃん!」
「…ソウデスネ。」
そう、あいあむ短気。我慢するとか無理。
いやでも社会的な立場はしっかりとわきまえてるし我慢しなきゃいけないことはしっかりとするけど、別に我慢しなくてもいいようなことはしなくてもいいじゃないって考え。
具体的に言えばほしいゲームがあれば発売日まで待てる。
けど、食べたいケーキが目の前にあったら迷わず食べる、みたいな。えーっとわかるかな?
「いただきまーす。」
「そんでおまえはちゃっかり朝飯いただく、と。」
「いつものことじゃんんっ!」
「へいへい。」
リビングへと向かってよっしーの隣へと座っていざ朝飯じゃ!
おばさん料理上手だからどれだけ食べても飽きない、とてもおいしい、これを毎日食べられるとかよっしーずるい。
もっもっもっとご飯を食べているとふとよっしーと目が合う。
「…なんだね清志くん。」
「いや、毎回思うんだけどおまえハムスターみたいだよな。」
「は?何?誰が身長がハムスター級だって?」
「いや、ちげぇよ、そういうわけじゃねぇって…。」
なぜそこでため息をつく。
自慢ではないが私超が付くほどミクロな身長です。145センチです。
童顔も手伝ってよくよっしーとお買いものに行ったりすると妹に間違えられます。
よっしーは童顔のくせに身長が高いから年相応にみられてます。くっそむかつく。
「こう、お前食ってるときほっぺ膨らむじゃん、だから。」
「あぁ、うん、無意識。」
「知ってる。」
指摘されればなんのことはない、私が口いっぱいにものを詰めて食べることを言っていたらしい。
なんだよ紛らわしい言い方しやがって(自分の早とちり)
「…さて、ごちそうさま。もたもたしてっと置いてくからな。」
「えっ!?まって!?いつのまに食べ終わったの!?うわああああおばさんごちそうさまっ!」
ガッと残っていた白米を口の中に詰め込み、もきゅもきゅとさながらハムスターのように咀嚼をしながら彼のあとを追う。…さっき言われたことってこういうことか、改めてよくわかりました…。
…が。
「風呂ン中までついてくんな削ぐぞ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「よっしーがおいてくっつったんじゃんんんんんんん!!!!!!!!!!」
まさか朝風呂とは…。
なんだよこいつ、おシャンティーじゃねぇか、あぁ、これもう死語かすまないテヘペロ☆
やれやれとため息をつきながらお風呂場から出て行くと「ため息をつきたいのはこっちだ!!!」と叱責を受けてしまいましたくっそう、よっしーの言葉が足りないのがいけないんだよ…。
さて、と。よっしーがお風呂に入ってしまったため私は暇になってしまった。
ということでここいらで私のスペックをお教えしましょう。
年齢、22歳、今年23歳。身長は185…っていうとどこからか桶が飛んできそうだから本音を言うと145センチ。
職業については言ったよね、年齢から見てもわかるように新米です。秀徳高校の保健室の先生やってます。
というか保健室の先生って案外暇でさー…こう、体育とか部活とか怪我してきた子の手当とか、無理して学校きちゃいましたって子の看病する以外これといって仕事がないんだよね。あ、資料整理とかはあるんだけど。
それだけやってればお給料もらえちゃうんだもん、楽だよね〜…とか思ったらいけないんだよねこれまた。
そして昨日泣いて帰ってたのは高校の時から付き合ってた彼氏にこっぴどく振られちゃったから。
まぁ、彼一個下でまだ大学生だからさ。まぁ私も去年まで大学生だったわけだけど…。
大学生って遊びたい盛りだものね〜わかるわかる〜。もともとお互い違う大学に通ってたんだけど、私が大学卒業して仕事をし始めるようになってからまぁ、開いてた距離がさらに広がっちゃった感じで。
さらには彼「ごめん、俺好きな子できたんだ」だと。
しかもちゃっかりその女の子隣に連れてきて!まぁ可愛らしい子でしたわ!私に比べたらかなり身長がでかくてキレイめの!聞けば年下だとか!若いってすばらしいわね!!(ヤケクソ)
ダンダンッとその場で軽く地団駄を踏んでいると不意にガチャリとお風呂場から扉が開く音が聞こえた。
振り返ってみればそこには私をみて呆然というか呆れてるような顔をしたよっしーが。
「…何してんのお前…。」
「いや、駄々っ子みたいに可愛らしく地団駄踏んでみようかなって…。」
「…冗談は身長だけにしとけよ…。」
「…。」
「ごめん、いや、あの…。」
「ミジンコでごめんなさい…。」
「いや俺そこまで言ってねぇからな!?」
よっしーをいじるの楽しいです(ゲス)
身長145センチの私から見ると191センチのよっしーはそれは巨人なわけなんだけれども…。
昔「名前ちゃんなんてすぐ追い抜いてやるんだからな!」って言ってたちびの頃のよっしーが懐かしい…、よっしーが小学校3年生のあたりでもう追い抜かれてた気がするけど…。
んま、それはさておき。
「よっしー自転車っしょー?」
「おー。」
「よっしゃ、二ケツじゃ!」
「…言うと思った…思ったけどよ…教師のいうセリフかよそれ…。」
「いや、私教師じゃないし、保健室の先生だもん!」
「だもん!じゃねぇよ全く…。」
私の口調真似したよっしーが可愛くて悶えてたのはここだけの秘密。
すっかりオレンジ色のジャージに身を包み、「SHUTOKU」と書かれたエナメルバッグを肩から下げたよっしーは「ちょっと待ってろ」といって車庫の方へと姿を消す。
二ケツかぁ…私が高校生の時代はまだそんなにうるさくなかったからカップルっていったらみんなしてたなぁ…うふふ、懐かしい。あ、どうしよう、自分で傷えぐった☆
玄関の階段で座ってよっしーを待つ。時折吹く風がとても気持ちが良い。
「おら名前行くぞ!」
「おーう!ちょっと待って〜。」
カラカラと自転車を引いてやってきたよっしーのもとへタタッと駆け寄るとその場でよっしーは自転車のスタンドを下ろして止める。
そして私の脇の下に手を差し込み至極簡単そうな手つきで持ち上げ荷台へと座らせる。
いやだってね、あの、普通に考えてみてくださいよ、191センチの男の子がのる自転車ですよ?「ホッ」なんて言って簡単に145センチの私が荷台へよじ登れると思いますか?
まぁこんなのいつものことなんでお互いなんとも思っていないわけなんだけど。
「落ちられても困るし、毎度のこと言ってっけどしっかり掴まっとけよ?」
「はーい、わかってますってー。」
そして私たちはそよそよと風を感じながら宮地家を出発、秀徳高校へいざまいるのであった。