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□おめでとうの言葉だけ
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車の中、愛音は光と馨に挟まれ身を縮ませていた。

両脇から漂ってくるのは紛れもない負のオーラ。

何故、二人がこんなに不機嫌かと言うと原因は愛音の首から垂れる銀のペンダント。

―――そう、待ってる間、暇を持て余した愛音は思い出したようにチカから貰ったプレゼントを開封し、尚且つ綺麗なそれを早速首に垂らしたのだ。

当然、先程まで付けていなかったソレに光馨は疑問に思う。それに答えた愛音。

――そして、今に至るのだ。

(俺らからのプレゼントは遠慮したくせに・・・)
(しかも男から貰ったペンダントを付けるなんて)

ペンダントは束縛の印。

それをチカが分かった上でプレゼントしたのかどうかは定かではない。

愛音は見るからに分かってなさそうだが。

何にせよ、チカが愛音に想いを寄せてるのは周知の事実である。

((気に食わねー))

・・・つまりは、嫉妬。

(何で怒ってんのー・・・)

本人、全く気付いてないけど。

気まずい空間の中、車は無情にも愛音の家に着いた。

ゆっくりと止まる車。

「じゃ、じゃあ送ってくれてありがとね」
「「・・・うん」」
「・・・・・・;」

なかなか二人の機嫌は浮上しそうにはありません。

溜め息をついて車を降りる。

なんなんだ一体。

少し落ち込み我が家の門をくぐった時・・・――。

「愛音!!」

びっくりする程の大きな声に思わず肩が跳ねる。

驚いて後ろを振り返ればそこには仏頂面な光の姿。

なんだ、別に機嫌が良くなったわけではないのか。その顔を見てそんな事を思う。

「あー・・・」
「なあに?」
「・・・・め・・・と」
「え?」
「誕生日!オメデト!!」

・・・そんな怒った顔でおめでとうなんて言われたのは人生初だ。

だけど、徐々に赤くなる頬が照れ隠しなんだと教えてくれて・・・。

「ぷっ」
「な、なんだよ!?」
「ははは、や、なんでも。・・・ふふ」
「―――っ!!」

なかなか笑いの収まらない愛音に、光の頬は益々熱を持つ。

(不器用だなぁ・・・)

全くです。

一度緩んだ頬はすぐには元に戻らず、愛音はもう一度笑った。

――欲しかったのは、たった一つ。



 おめでとうの言葉だけ



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