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□映画のチケット(二枚)
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嵐を巻き起こして去って行った馨を見送り鏡夜は溜め息混じりに愛音の向かいに腰掛けた。

今のを光が見ていたらどんな反応をするか、想像に容易い。

「随分とおモテになるようだな」
「私、モテ期みたいで」
「何でも構わんがホスト部の売り上げに関わるような事はしでかしてくれるなよ」
「気をつけまーす・・・」

紅茶を啜り、愛音はチラリと鏡夜の顔色を窺った。

どうしてこの人は私を客扱いしてくれないんだろう。

ココまで態度があからさまだと、まあ逆にどうでもよくなるが。

「で、モテ期な愛音さんに本命は居るのかな?」
 ↑
素敵な笑顔

「ノーコメントです」
「一丁前なセリフを吐くわけか」
「・・・・・・」

(私、なんか鏡夜先輩に嫌われるようなことしたかなぁ)

さくり、机の上にあったクッキーを頬張る。

多分、そんな態度も鏡夜の癇に障るんだろう。

そんなことには全く気付かない愛音だ。

「ああ、そうだ」
「はい?」

思い出したかのように懐を探る鏡夜に首を傾げる。

ぺらーん。出てきたのは二枚の紙切れだ。

「何ですかソレ」
「とある筋から貰ったものだ。庶民向けの映画チケットだが、いるか?」
「ぜひ!」

興味津々に瞳を輝かす愛音に鏡夜は無言でそれを渡す。

「え・・・。ってか二枚ってもしかして鏡夜先輩と・・・」
「寝言は寝て言え」
「ですよねー」
「それを使って本命とやらを誘えばいいんじゃないか?」

数秒、考え込む。

“彼”と肩を並べ映画を見る私の姿を。

(いいかもー)

決定、です。

「鏡夜先輩、ありがとうございまーす」

本日何度目かの満面の笑顔。

それを向けられた鏡夜は満足げに小さく鼻を鳴らした。



 映画のチケット



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