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□お祝いのキス
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「ねー愛音。プレゼント・・・」
「光、しつこい。いらないってば」

ぴしゃり、容赦なく遮られた言葉に光は唇を尖らせる。今日だけでこのやりとりを何度したことだろう。

馨はその光景を眺めながらそんな事を考えた。

頑固な愛音はなかなか欲しい物を言おうとはしない。

今言ってくれればマッハで用意することは可能だろう。・・・お金の力で。

でも、愛音が望むのはそんなことではないらしい。

つんッとそっぽを向く愛音の横顔を眺めていたら、もやもやとしてくる胸の内。

(ハニー先輩には飴貰ったくらいであんな可愛い笑顔見せてたくせに・・・)

嫉妬です。

まぁだからって愛音の誕生日に八つ当たりしてしまうほど子供でもないからここは我慢だ。

「光馨。交代だ。次のお客様がお待ちだぞ」
「「・・・ハーイ」」

鏡夜の呼びかけに渋々と立ち上がる双子。

あ、と小さく唇から零れる愛音の声。

その声に反応して振り返ればそこには何やら不満げに唇を尖らす愛音が。

プレゼントはいらない、なんて言うくせに。

こんな顔を見せられたりした日には。

――ちう

可愛らしいリップ音をたてて、馨の唇が触れたのは愛音の頬。

ポカン、と状況を理解出来ていないかのように頬を抑える愛音が自分を見上げていた。

そんな愛音にニッと意地悪く微笑んでやる。

「物欲しそうな顔してたから」
「んなっ!し、してない!!」
「どうだか」

悔しげに唇を噛み締める愛音の頬はリンゴのように真っ赤だ。

そんな顔を見てしまったら先程までのモヤモヤなんて一瞬で消えてしまう。

「これが僕からのプレゼントということで」
「・・・・・すっごいキザ」
「そりゃホストだからね」

理由になってないと思う。思う、が。これが馨なりのプレゼントだと言うならば・・・。

「・・・ありがとう」
「どういたしまして」



 お祝いのキス



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