短・中編小説
□毒吐き伯爵
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毒吐き伯爵。
その名の通り、口を開けば毒々しい言葉の雨霰。
本人が意図的に降らしているのか、はたまた無意識なのかは定かではない。
転入生だろうと生徒の崇拝対象である生徒会だろうと、伯爵の癇に障れば例外なくその毒は降り注ぐ。
「だから、お前の名前はなんて言うんだよ!
友達なんだから教えてくれよ!!」
友達?
俺と、お前が?
「煩い」
冗談じゃない。
「なっ!そんなこと友達に言っちゃダメなんだぞ!?ちゃんとこっち見ろよ!」
何が「ダメ」だ。碌に漢字変換も出来ないのか。
「おい!!聞いてるのか!?」
こんな至近距離でくっちゃべってるのだから聞こえていない筈がなかろう。
いちいち語尾に感嘆符を付けるな、煩わしい。
「おいって!!」
―――ブツ
「……黙れ、と言ったのが分からないのか。低脳」
もう沢山だ。
この猿の後ろで俺を睨んでいる馬鹿共。お前らも同罪だ。
大人しく、俺に頭を垂らせ。
「ギャアギャア耳元で騒ぐな。不快を通り越して気持ち悪い。俺はいつお前の友達になった?ハッ、冗談も大概にしろよ。お前の脳内はその不潔な頭と同等に汚れているのか。いや、それ以上か?猿ほどの脳味噌も持ち合わせていないのか。甚だ憐れだな。それともお前の脳内花畑は蛆でも湧いているのか。あぁ、でも元々腐りきっているのだから何も問題ないな。人の名前も知らないのによく友達など名乗れたものだな。片腹痛いわ。俺と知り合いになる?友達になる?なりたいなら一度人生をやり直してこい。一度だけでは足りないな、そのお気楽で自分よがりのその頭は末代まで治らないだろうな。やはりお前とは毛ほども知り合いたくはない。早々に俺の視界から姿を消せ。そうでなければその糞生意気な口を縫い合わせてしまおう。そうすれば少しは静かになるんじゃないか」
先程まで目の前の猿に向かって飛んでいた罵声は、もう止んでいて、辺りは耳鳴りがするほど静まり返っていた。
まだまだ終わらない毒吐き伯爵の毒の宴。
さぁ、伯爵に拝跪して。
伯爵に楯突いた愚かな脳髄を。
頭を垂れて晒してごらん。
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