短・中編小説
□大願成就の冬
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今年はどうやら厳冬らしい。朝の天気予報では、今年一番の寒さを記録するとのこと。
今年、と言ってもあと僅かしか日はない。
黒のマフラーを首に巻いて、少しでも暖まろうと肩を窄める。
隣を歩いているのは、御城だ。
あの告白から三ヶ月。
御城絡みの事件が多々あった。それはもう、喧嘩に巻き込まれるわ、拉致紛いの目に遭うわ。
まぁ、そんな出来事を乗り越えて、俺達は上手くやっている。
未だに手を繋ぐことさえ躊躇する程、御城は純情だった。こちらが戸惑ってしまうくらいだ。
手を繋ぐのも一苦労なのだ。ましてキスなんて、この三ヶ月一度もしたことがない。
御城はドが付くくらい奥手だった。告白された側の俺の方がやきもきしてしまう程。
一緒に下校する時に、何気なく手を繋ごうとしたら、指先が触れた瞬間に物凄い速さで引っ込められた。
昼食の時だって、隣に腰掛けるとそろりと距離を開けられる。
何と言うか、不満だ。
確かに告白してきたのはあちらだが、俺だって御城のことが好きなんだ。
好きな奴には触れたいと思うじゃないか。傍にいたいとか思うじゃないか。
いくら恥ずかしいからって、そんな態度をとられると不安になってしまうではないか。
本当は俺なんて何とも思っていないのではないか。
そう、思ってしまうではないか。
あれだ。
正直に言えば、俺はあいつに触れたい。もっと近くに寄りたい。
キスだってしたいし、その先だって。
けど、不安で。
俺だけがこんなにも執着していて。
いつか、この卑しく蜷局を巻いた感情を気取られてしまうのではないか。
怖いんだ。
押し込めているこの衝動が爆発して、あいつを傷つけてしまう気がして。
そんなんだから、秋原を未だに名前で呼べていない。
理性の箍がいとも簡単に外れてしまうような気がして。
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