番外編

□10分間ハロウィン
1ページ/2ページ





 いつだったか。

 夜に家を抜け出して、昼間と同じくらいの賑わいを見せる繁華街へと赴いた時があった。


 ネオンで照らされたそこは、明るい時の堅物な雰囲気を一変させ、危ない空気を纏っている。

 まぁ、実際危ないことをしている人も少なからずいたので、そんな空気も納得出来る。

 大した当てもなく、ただぶらついていた。



 気分は良いとも悪いとも言えず、兎に角「普通」だった。


 非日常的なことを望んでいた訳でも、何か少し悪さをしようと言う訳でもなく、そこにいた。


 ちらりと目をやった先にあったのは、もう閉店してしまって少し寂しい雰囲気が漂うレストラン。

 時間が時間なので、覗いた店内は暗かった。


 ただ、カーテンが引かれた窓には「HAPPY Halloween!」と紙で出来た文字が貼られていて、今日がそのハロウィンなのだと思い出した。


 別にハロウィンだからと言って、何をするわけでもない。それにもう直ぐ日付が変わる。


 家に戻ってもすることは無かったし、ただ眠りに就くだけ。義務的なそれで疲労が取れることはない。


 誰もいないと思っていたし、実際人気を感じなかった。


 だから、気紛れにそこにいた。


 どうせ一人なのだ。


 楽しむイベントでもないし、ただ、「Halloween」の字が変に楽しげだったから。





 どれくらい時間がたったか、キィ、と小さな音がして気配を感じなかったレストランの扉が開いた。


 人が、いた?


 姿を現したのは金髪がよく似合う青年だった。輪廻よりも大分背丈がある。


「子供か?さっきから、ここで何してんだ?」


 あと十分程で、時計の短針が頂点に来るという時間。

 親らしき大人も連れず、子供がたった一人で夜の繁華街にいるなど、普通は不審に思うだろう。


「親はどうした?一人でいるにはここは危なすぎる。」


 一向に口を開かない輪廻に少々苛立ちを覚えるものの、一介の子供に怒鳴ることなどする気にもなれず。眉を顰め返答を待った。


「親は、ここに俺がいることは多分知らない、と思う。」


「?どういう、」




グゥゥ……





「………この腹の虫はお前のか?」


 反射的に顔を背ける。




</>
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ