番外編
□10分間ハロウィン
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いつだったか。
夜に家を抜け出して、昼間と同じくらいの賑わいを見せる繁華街へと赴いた時があった。
ネオンで照らされたそこは、明るい時の堅物な雰囲気を一変させ、危ない空気を纏っている。
まぁ、実際危ないことをしている人も少なからずいたので、そんな空気も納得出来る。
大した当てもなく、ただぶらついていた。
気分は良いとも悪いとも言えず、兎に角「普通」だった。
非日常的なことを望んでいた訳でも、何か少し悪さをしようと言う訳でもなく、そこにいた。
ちらりと目をやった先にあったのは、もう閉店してしまって少し寂しい雰囲気が漂うレストラン。
時間が時間なので、覗いた店内は暗かった。
ただ、カーテンが引かれた窓には「HAPPY Halloween!」と紙で出来た文字が貼られていて、今日がそのハロウィンなのだと思い出した。
別にハロウィンだからと言って、何をするわけでもない。それにもう直ぐ日付が変わる。
家に戻ってもすることは無かったし、ただ眠りに就くだけ。義務的なそれで疲労が取れることはない。
誰もいないと思っていたし、実際人気を感じなかった。
だから、気紛れにそこにいた。
どうせ一人なのだ。
楽しむイベントでもないし、ただ、「Halloween」の字が変に楽しげだったから。
どれくらい時間がたったか、キィ、と小さな音がして気配を感じなかったレストランの扉が開いた。
人が、いた?
姿を現したのは金髪がよく似合う青年だった。輪廻よりも大分背丈がある。
「子供か?さっきから、ここで何してんだ?」
あと十分程で、時計の短針が頂点に来るという時間。
親らしき大人も連れず、子供がたった一人で夜の繁華街にいるなど、普通は不審に思うだろう。
「親はどうした?一人でいるにはここは危なすぎる。」
一向に口を開かない輪廻に少々苛立ちを覚えるものの、一介の子供に怒鳴ることなどする気にもなれず。眉を顰め返答を待った。
「親は、ここに俺がいることは多分知らない、と思う。」
「?どういう、」
グゥゥ……
「………この腹の虫はお前のか?」
反射的に顔を背ける。
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