番外編

□孤独の空
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 綺麗だと、思った。


 柔らかい橙の空。

 何気なく見上げた、そんな夕空を切り取ったような、余所行きな雰囲気を持たない絵。

 他人に媚びるようなお誂え向きの色は無く、ただ自然にあるままの姿。


 少し退廃的な建物の後ろで全てを寛容し、剰え額縁の向こうにいる人間すら抱き込むような、そんな空。




 中学生の餓鬼が思うには些か大人び過ぎている気もしないわけではない。

 が、そんな感想を持った絵に自己犠牲を問わないような、優しさの中にある悲しみを、確かに感じ取っていた。



 誰が描いたのかと、俄かに好奇心が湧き、額縁の真下に貼られている作品紹介の薄っぺらい紙に目をやった。



 多凪中学校二年 椿 和泉



 余所余所しい細い明朝体でタイプされていたのは、近隣の中学校名と自分と同学年の中学生の名前。


 恐らく「いずみ」と読むのだろう。


 猛々しくもなく、女々しくもない固有名詞から性別は読み取れない。




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