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□手を繋いで出掛けよう
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「あ。大志、肉まん食べたい。」


「……突然何を、」


 吐いた溜め息は白い。


 雪は降っていないものの、昨夜まで降り続いていたそれは、歩くのも一苦労なくらい積もっていた。

 穿いているジーパンの裾は、雪に擦られていたためか、水分を含んで重くなっている。

 昨日まで天気が荒れていたことを忘れるくらい、朝の太陽は輝いていた。

 この分なら大丈夫だろう、と、長袖のTシャツに薄手のパーカーという格好で遊希と買い物に赴いた。



 詰まるところ、高をくくっていたのだ。



 冬にこんな格好をするものではない。

 マフラーを巻いているのが、唯一の救いだろうか。



 顔を埋めるようにマフラーを引っ張った。


「大志ー、コンビニ寄ろう!コンビニ!」


 随分元気がいい。まるで某童謡の歌詞に出てくる犬のようだ。すると、俺は炬燵で丸くなる猫か。

 まぁ、悪くないな。


 残念なことにうちに炬燵は無いのだが。


 雪に足を取られることはく、軽やかに歩いていく遊希は後ろからみると本当に犬のようだ。寧ろ犬にしか見えない。


「早くー」


 いつの間にかコンビニに行くことに決定したらしい。別に反論する程のことではないし、コンビニなら暖房も効いているだろう。



 ただ。





「遊希、お前財布は持ってきたのか?」


 あからさまに身体を揺らし、軽快だった歩みを止めた。







「……忘れた。」



「………どうやって肉まんを買うつもりでいたんだ?」


 遊希の財布には元々お金なんてものは殆ど入っていないし、手元にあってもなんの意味も成さないのだが。多分、遊希は素で自分が財布を持って来ていないことを忘れていたのだろう。



 マフラー越しに息を吐く。

 乾いていると思っていたそれは、予想以上に水気を帯びていたようで、口周りが少しばかり湿った。



「で、どうするんだ?」


「うぅ………」


 遊希は首を項垂れ、がっくりと肩を落とした。





「仕方ないな。」


 だらりと下げられた遊希の手を握り、足早に歩き出す。ザクザクと雪を踏んで次々に足跡を増やしていく。


「今日は俺が奢ってやるよ。」


 そう言うと、遊希は俄かに表情を明るくさせて、大きく頷いた。


「つか、大志の手冷たっ」


 寒空の中ずっと外気に晒していたからな。


 始終ポケットに手を突っ込んでいた遊希の手は、俺とは正反対にとても温かい。


 顔は似ているが、中身は犬と猫の如く正反対。



 双子の弟と。


 温かい手と冷たい手を。





 コンビニに着くまで繋いでいた。




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