□レイジーアイのカプリース
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それはあんまりにも突然だった。わたしはただ、部屋でくつろぐ晋助にお茶でもと思って、お盆に湯呑みを乗せて三味線の音のする一室の襖を開けて晋助のとなりにあるつくえにお茶を置こうと思っただけだった。「晋助ー、お茶持ってきたよー」のんびりそんなことを言って部屋に入ったそのとき、なんにもない畳でなぜか足が滑ってお盆を手から取り落として、湯呑みの緑茶を晋助の頭に豪快にぶちまけてしまって。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

挙句の果てに、体勢を崩して倒れ込んだ。一番倒れたくない、高杉晋助の身体の上に。

「・・・・ごっ、め、」

こ、ろ、される!このまるでわたしが押し倒したかのような態勢。殺される!2人で身体を起こし、背中にだらだら流れだした冷や汗なんかしるか、わたしは急いで無言の晋助の上から退こうとする。「し、晋助ごめん!わたしなんか拭くもの持ってくる!」なのに晋助はわたしの手をはっしとつかんで離さなかった。わたしの手首をつかむ、力が強い。怒ってる。あたりまえだ。「いい度胸してんじゃねえか」晋助は俯きながら言う。「ご、ごめん・・・熱いでしょ、早く冷やさないと」わたしは言いながら晋助の、不本意にお茶まみれになり湿った黒髪に触れる。すると彼はかすかに顔をあげた。ながい前髪の隙間に、彼の片方のきれいな瞳、こんな姿勢だから、彼の隻眼は上目づかい。はじめて見た晋助のそれに思わず見入っていると、

「上等だ」

腕がわたしの身体にからむ。気がつけばはじまっている永遠に止まりそうのない晋助の口付け。起こした身体は再び畳に押し戻されて、今度は晋助がわたしの上に。あーあ、わたしそんなつもりじゃなかったのになあ。







レイジーアイのカプリース

(熱くないの?零したとこ)
(うるせーな、黙らすぞ)
(火傷しちゃうよ?)
(はっ、上等じゃねえか)





20080814
*遅ればせながら高杉誕生日おめでとう!

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