ポケモン

□何でもないの日
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「コスミ」

「何ですか?ヒエイさん」

「何でもない」

手を繋いで、マサラの空を見上げて。
先程からずっとこの調子です。
私達は、二人で散歩中。

「ヒエイさん」

「何?」

「いえ……何でもありません」

そう、ずっとこんなやりとりをしているんです。
伝えたいことがあっても、もうそれは氷影さんには分かっているような気がして、言わないまま。

「コスミ」

「はい、何ですか?」

「やっぱ何でもない」

また暫くすると同じようなやりとりをして。
先程からまったく変わらないやりとり。

「ヒエイさん」

「何?コスミ」

「何でもありません」

もい幾度目かのそのやりとりをした後、氷影さんが私の手をきゅっと握りました。
先程よりも体温を感じます。
彼らしい冷たい温度が手から私に伝わってきました。

「コスミ」

「何ですか?ヒエイさん」

「何でもない。何でもないけど、何かさ、幸せだよな」

手を繋いで、マサラの道を二人で、先程から歩いています。
ただそれだけだけれど、氷影さんが幸せだと言えば、私も幸せになれて。
確かにこれは幸せ。

「はい、そうですね」

「よし、ハナコさんのとこ寄って行くか!」

「はい」

ハナコさん、サトシのママさんのところへ行くために、歩く方向を少しだけ変えました。
手は繋いだままです。

「あら、ヒエイくんにコスミちゃんじゃない」

そこに、ハナコさんが来ました。
買い物帰りなのでしょうか。
野菜などの入った袋を二つ持っています。

「あ、ハナコさん。こんちわ」

「こんにちは」

「今からハナコさんのところにでも寄ろうと思っていたんです」

「そうなの?なら行きましょう。おやつを作ってあげるわ」

「でも」

「遠慮はいいのよ。サトシののポケモンなんだから」

ハナコさんに誘われて三人(?)でアフタヌーンティーをすることになりました。
家につくと、お手伝いをしているバリヤードの鏡さんがハナコさんの荷物を預かっていきました。
働き者ですよね、彼は。

「そこに座っていてちょうだい」

「バリバリ」

「あら、ありがとうバリちゃん」

「バリィ」

鏡さんがハナコさんのエプロンを持ってきました。
ハナコさんはそれを着けてお菓子作りに取りかかります。
何だか、ただ此所で待っているのは悪い気がします。

「コスミ、待ってようぜ。一応、お客さんみたいなもんなんだろうし」

「そうですよね」

私が落ち着きのない様子だったからでしょうか。
氷影さんに言われて、私は大人しく待つことにしました。







「出来たわよ。二人共、召し上がれ」

ハナコさんがおやつを持ってきてくれました。
この短時間でどう作ったのかは分かりませんが、パウンドケーキを作って下さったようです。
もとから生地だけでも作ってあったのでしょうか。

「ありがとうございます」

「いただきます♪」




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