小話1

□電話
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真夜中。
司令部の一室。
ひとけのないそこで、ハボックが一人でぼんやりと書類ファイルを眺めている。

じりりん。

「はい、国軍司令部」
『ハボックか』
「……なんだ、あんたか。なんか用スか」
『なんか用かとは、上司に対してご挨拶だな。減俸がそんなに好きとは知らなかったぞ』
「マスタング将軍閣下、お疲れ様です。こちら異常ありません、どうぞ」
『………まぁいい。それより、今なにしてた』
「はぁ。過去の未解決事件のファイル見てました」
『なんだと?なぜそんなに真面目なんだ、ハボックのくせに』
「どういう意味スか。てゆか暇なんスよ、当直ったってなんもねぇし一人だし」
『軍が暇なのはいいことじゃないか』
「タバコばっか消費して、財布ヤバいっス。特別手当申請します」
『ところで貴様に相談があるのだが』
「間髪入れずに無視っスか」
『鋼ののことなのだが』
「エドがどうかしましたか?」
『うむ。実は、今日そこからの帰りに女性に道を聞かれてな。教えたらお礼にお茶でもとか言われて』
「自慢話なら切りますよ」
『まぁ聞け。でな、それを鋼のが見ていたらしくて、誤解してしまってな』
「女に鼻の下のばしたりしてるからだろ」
『いやもちろん断ったさ。私には可愛い妻がいるからとな。でも鋼のがなかなか信じてくれなくて、拗ねて口をきいてくれないんだ』
「普段の行いがこういうときモノ言うんだな」
『やかましい。昔の話だろう、それは』
「エドにとっちゃ昔も今も関係ねぇんじゃねぇの」
『うーん。それで困ってるんだ、どうしたもんかな』
「どうって…」
『本当に困ってるんだよ。ヤキモチやくなんて思わなくて…』

「思わなくて?」

『もー可愛くて可愛くて!』

がちゃん。

じりりん。

『なぜ切る!』
「ノロケたいならよそでお願いします。オレ仕事中なんで」
『上司が困っているんだ、これは立派な仕事だろうが!』
「どこがだよ」
『とにかくどうしたらいいかわからんのだ!拗ねた顔も可愛いし、ヤキモチやいてくれるということはそれだけ私を愛しているということだろう!もうホント、えーとどう言えばいいか!床を転げ回りたい気分だ!』
「転げ回れば?」
がちゃん。
じりりん。
『ハボック!貴様私の話を聞く気があるのか!』
「ありません」
がちゃん。
じりりん。
「あんなぁ、いい加減に」
『あ、少尉?』
「エド?」
『ごめんな、大佐が迷惑かけて』
「いやいいけど。准将は?」
『殴ったら拗ねた。だってあんな大声で…』
「………あー」
『とにかく、よーく叱っとくから。ごめんね、仕事中に』
「いや…エド、今日のことは…」
『うん。誤解だろ?わかってるよ』
「准将はマジでずっとおまえだけだからよ、浮気なんかしねぇよ」
『うん…でも、やっぱちょっと面白くなくて。嫌がらせしようと思ったんだけど、こたえてないみたいだからやめた』
「おまえがなにしても准将は喜ぶだけだと思うぞ」
『……それって…あの……大佐ってなにか、そういう趣味が……?』
「………………」
『………………』
「………じゃ、仲良くやれよ」
『…………うん……』
「じゃあまた」
『……………うん。仕事、頑張ってね……』

かちゃり。



「これくらいの仕返しは、まぁやってもいいよな」

ファイルを手に窓際へ行き、タバコをくわえて火をつける。

煙を吐きながら外を眺める。街の明かりが煌めくだけで、通りには誰もいない。車が一台走り去って見えなくなる。

「………疲れたー……」


また椅子に座り直してファイルをめくる。

電話はもう、鳴らなかった。






END,

リハビリ。
わけわかんねぇなコレ。

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