20蔓打記念ゲームブック
□【隣に詩人】
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『隣に詩人』
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のほほんとした正月気分も漸く抜けてきた、ある日のこと。
『今年こそは計画的に資料整理をしよう』と遅い抱負を決めた僕は、さっそく最寄りの文具店に向かい、ファイルやら括り紐なんかを大量に買い込んで事務所へと戻ってきた。
道具を揃えただけで目標半分程の達成感が生まれてしまう辺り、僕は幸福な部類の人間なのかもしれないけれど。
「ただいまー!」
宛てのない『ただいま』を呟きながら、何時ものようにドアを開く。
チャーリー君もたまには返事なんかしてくれたらいいのになぁ、とか思いながら。
「おかえりー!!」
――そうそう、こんな感じで。
独り暮らしなせいか、そんな他愛もないことに温かみを感じたりとか…………
「…って―――え゙?」
「やあ!お邪魔してたけど決して邪魔なんかじゃないと思うよ?だってほら、ボクはお客さんだから」
来客用ソファの真ん中にゆったりと寛ぐ、自称『お客さん』はそう言って笑い掛けてきた。
事務所には誰も居ないことが前提の日々だった僕は、その妙なニッコリ具合に一瞬唖然としたけれど。
それはどうもお待たせしましたと、ごく一般的な挨拶を返しながら、慌てて達成感溢れる荷物をデスクに放る。
そして引き出しから名刺を取り出し、ソファで悠々と寛ぐお客さんの対面に腰掛けたのだった。
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