バレンタイン企画〜情熱の嵐2009

□≡ exit ≡
1ページ/3ページ


くり返すのは 儚い夢
帰れない時の中で
あの日に貴方と出逢って
僕は恋に落ちた

叶わない事だと
知っていたのに――――





≡ exit ≡
〜Episode from White day〜






「お返しなんてよかったのに……ゴドーさん」

「クッ!ならば問うぜ……何故此処に上等のコニャックがあるのかを、なァ………」


期待なんかはしていなかったと……裏路地の闇に汚れ、スレたコネコはそう呟く。

ソイツは何故だと聞き返せば、『始めから何も期待しなければ、僕は何時も泣かずに済むから』と、笑った。


「それはたまたま……最後の客が羽振りよくて、キープせずに置いていったんです」

「ほォ……開封もしねェでかい?」

「………………。」


相変わらず、コネコは嘘が下手過ぎる。
黙っちまう辺りは昔も今も変わらねぇが、そのくせ今は尻尾だけ何時もきちんと曲げておく。

手渡した甘い砂糖菓子の箱を弄びながら次の言い訳を考え、丸い瞳はクリクリとせわしなく泳いでいた。


「グラスは一つかい?」

「……何故ですか?」

「二つだろうぜ?……アンタの望みは」


甘く窘めるように囁きながら瞼にキスを落とせば、明後日を向いた尾も多少はコチラにと寄る。

うぅ…と小さく呟いて成歩堂は丸椅子から降り、カウンターの棚からもうひとつ、グラスを手にし戻ってきた。

その姿に口端を上げ、店内の冷気で凍てついたようなコニャックの瓶を手にし、栓を回す。
氷がなくとも充分に冷えている琥珀の液を双方のグラスに注いだ。

幾分甘口なモルトを一口ばかり味わってからグラスを成歩堂へと手向けると、漸く少し唇を緩ませて残されたグラスを手に取った。
カチン……と、質の悪いグラス同士が響きあう。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ